風花雪月

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 バランス、トランス、フリーランス、シーラカンス。  つまらない理屈など、どうでも良いのだ。  知ったところで、何の得にもならないだろう。  私はこう考えるのだ。  漆黒の闇はしつこい程に精神構造に絡みつき、螺旋模様を描き続けているが、所詮は常識の範囲内でしか動くことが出来ていないのだ。常軌を逸した世界など、地理学的な時間を費やしたとしても、辿り着くことのない境地でしかないのだから。  土台など崩して、瓦礫にしてしまえば、何の問題もなくなるのだ。  全ては見え透いた嘘を幾重にも重ねて築き上げた、世界観だけが存在している無機質な物体でしかない。  日の当たらない湿地を滑らかに這う蛇を見ていれば分かる事だ。  死肉を食らいつくすために、百匹の蛆虫が蠢いている所にこそ、真理という物が存在している。  幾千のもの針のような視線に突き刺されて、穴だらけになり、傷口から流れ続ける血の中にこそ、我々が最も欲しているどす黒い真実がある。  目を背けようとしても、視線という物が勝手に動いてしまうような感覚に支配されている間は、見え隠れする本質を必死になって追いかけてしまうものだろう。  的を絞り切れない下手糞な狙撃手が、いつになっても引き金を引けない、グダグダしたつまらないシーンを作ってしまう。  両目と両耳を潰してみよ!  手探りで暗闇の中を、感覚だけで動き続けることになるだろう。  感覚的な物だけは研ぎ澄まされていき、鋭敏になった感覚だけで、生きていく事になるだろう。  微かではあるが、芯のぶれることのない、一縷の真理という物が見えてくる筈だ。
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