風花雪月

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 憧れの果てにあった疼きの奥をまさぐってはみるが、無暗に積み重ねられた履歴がボロボロと乾ききった泥のように崩れ落ちてくるだけで、本体を掴む事が出来ないもどかしさが見つめる、変化を忘却の彼方に追いやった水平線でしかない。  猛毒を孕む鱗粉を好き勝手に巻き散らす黒い蝶を捕まえようとして、思いっきり両手を伸ばし、霧の中を必死に走り続けるが、全てを見失って疾走を続けるだけの無駄しか産み出すことのない詩人が吐き続ける嘘のようなものだ。  かなり多くの物が素晴らしい進化を遂げてきたが、導き出される結果が過去と全く遜色がないようでは、歴史から得られた教訓は生かされなかったことになり、軽蔑してきた過去の嘲笑となれば、こらえ切れなくなった現実は瓦解し、見るに堪えない無様な結末を迎え入れることになる。  スペインは晴れ渡っているだろうか……。  青く澄んだ空の下、この世のありとあらゆる物は、立派な消耗品としてこき使われ、使い物にならなくなると廃棄されていくが、降り続く雨の中では、動くことすら忘れてしまった役に立たないお荷物でしかなく、金にならない生産能力を全く持たない芸術の喘ぎ声となってしまうのだ。  見えない圧力によって束縛を受け、檻の中で無理やり生まされる気持ちの入らない生産性は無機質な色合いに満ちた搾取を見抜けず、鎖につながれた努力は休憩を取ることなく稼働を続け、サラサラと無情に流れ続ける砂の中に埋もれて消えていく。  何も認知出来ずに通り過ぎていくものを取り戻そうとするとき、枯れ果てた荒野で全く身動きが取れず、見えなくなってしまった周りの憧憬が舌を出して笑い続ける響きを感じ取りながら、叶わぬことのない理想の渦の中に溺れ続ける。  不平等が生み出し続ける、狂いまくった倫理観の暴走に征服され、大切な物を搾取され続けた果てに見た夢の支配に敗北を重ね、空間の中での孤立から導かれる正解を理解することはなくなり、無駄に騒ぎ踊り続け無能な存在感だけを醸しだしている真実。  チャイムが鳴っている。何時もとは違う音だ。財布から金がこぼれた。いつの間にか一人になっている。カブトムシを捕まえるために林の奥に入っていく。木、林、森、六本木……。冬が来たね。蝸牛よりコタツムリ。ダイダラボッチよりクリボッチ。鍋を突くより人を突いて大炎上。糞のような熱さだから焼け糞。どうでも良いよね。誰の物でもない。不潔な間柄は悪臭を放ち悪意の実を実らせる。  もう知らない。誰がどうなろうと。  お花畑では今日も幸せだから……。
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