風花雪月

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 洗い物には蓋をしろ。大丈夫どうせ分からないから。何かやらかしたら黙っているに限るな。トン平、チン平、カン平。隠蔽工作だよね。死体だって深く埋めちまえば分かりやしないし~。ここ掘れ一一ってことで。  水の畔を華麗に舞う青い蝶をじっと眺めてはいるが、自然の摂理に対する回答に到達することはない。物事は常に目的の中でしか存在出来ないのかもしれない。目的を持たずに存在をしてしまえば、単なるゴミと変わらない。  一丁、二兆、浣腸。  ガスがたまって下っ腹がブスブス言ってるぜ。屁が一時間に五十五発もでたぜ。道に落ちていたポテチでも食ったか。いやお地蔵さんのお供え物を食っただけ。それ天罰だろう。ばつが悪いな。肥溜めの中に落ちてしまったよ。動くなよ。そこにいろよ。俺達がここからいなくなるまで。  やばくなったら体調不良で雲隠れ。仮病、詐病、画鋲。そのうち後ろから襲われますよ。大丈夫。俺偉いから。二回も同じ手使う?信用第一ですから。いやもう終わりでしょう。見捨てられるよ。大丈夫。人を騙すのはお手の物だから。最後は他人に擦り付ければ良いだけだから。  スーツ姿の人間達が同じような毎日を繰り返す殺風景が描く牢獄は、鉄格子を通して眺めるしかない疲れ切った夢に喰われた廃屋となり、生きている実感ですら暗闇を漂っている亡霊のような世界観でしかない。  この前は芋ずる式にズルズル引き摺られ続けてさ。目が覚めたら歯を磨いていたけど、鏡の前に立っているのは俺じゃないんだよね。車を運転していたら正面からきた車にぶつかってさ。気がついたら友達と一緒にいたけど、一時間後には都内にいなければならないのに話に夢中になっていて、都内のその場所に行くのにはどう頑張っても三時間はかかるんだよね。いつの間にか飛行機に乗っていたけど、空を飛んでいる感じじゃなくてさ、川の流れに沿った道を歩いていた。そう言えばその日は知り合いと温泉に行く約束をしていたけど、平気で部屋でテレビを見て寛いでいた。知り合いから連絡が入ったけど、申し訳ないと言う気持ちではなかった。暫くは何が起こっているのか分からない感覚の中にいたかな。気がついた時には、旅館で知り合いと卓球をやっていたら、断崖絶壁だった。  飛んだら回るしかないよね。  どうにもならないけど何とかなるだろ……。
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