風花雪月

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 沢山の苦難に見舞われ余りにも短い何気ない日常が幸福となってしまうことが人生だと達観してしまうことに辟易し、全てを投げ打ってゼロからやり直す気にはなれないが、何とか命を糞真面目に繋いでしまい、ダラダラと人生を過ごして終焉を迎えてしまう儚さに、美を見出す事しか出来ない憐れさを笑うしかないのだ。  緻密な計算をされ尽くした中で展開をされる素敵な物語は、ご都合主義で固められた壁に囲まれた狭い部屋の中で見え透いた嘘を並べているような物であり、放埓で主観的な主義を貫くルサンチマンの理想論の片隅に置かれた嘆きの破片でしかない。  意識が流れ続ける過程における言葉達の旅の行程に憧れを抱くけど、砂時計がサラサラと刻む時の流れに埋もれてしまいそうになり、潰されて歪んでしまった精神が復旧することは忘却の彼方へと走り去っていき、何も覚えていない時は虚像に虚像を重ねて原理的には存在しない場所へと退避するのだ。  惨劇と悲劇の境界線を手探りで進み続けてはいるけど、ありとあらゆる物から無視をされている疎外感を覚えなければならず、普通というくだらない演技で現実逃避した俳優のようになる覚悟はないので、沈黙の中に身を置くことで朽ち果てるのを防いでいる。  毒蛇の群れが蠢いている穴の中に片脚を突っ込んでしまえば、全く身動きが取れなくなり破滅は目に見えているが、何かを見出すために危険の中に飛び込んでも、身を亡ぼすだけであり、そこに何も得る物など無いと言うことを敢えて身をもって示さなければならない社会ばかりなのだから、ダラダラとした糞のような毎日に感謝をしなければいけない。  灼熱の地にて上半身裸でランチを楽しんでいるが、列車の中はやたらとクーラーが効いていて、身体はキンキンと突き刺すような寒さに震え続けるのだ。喧騒に囲まれた都内で煙草を吸いながら歩き出すと、スクーターに乗っていて、急カーブが曲がり切れず転倒をしてしまう。初めて会った人と談笑をしていたが、以前つき合っていた恋人とコーヒーを飲んでいるものの、コンビニで一人雑誌を立ち読みしていた。部屋で一人、煙草を吸いながらエロ雑誌を読みふけっているのだが、受験勉強に取り組もうとしているのに勉強なんてやったことが無いことに気づき、仕事先で取り返しのつかない失敗をして混乱しているのに、財布を失くしてしまったことがやたらと気になって仕方がない。  車に携帯を忘れてしまった事を思い出し取りに行こうとするが、砂浜でやたらと感傷に耽っているのに、恋人とドライブを楽しんでいたが、やたらと深い霧の中にいて、激しい音楽ばかりが響き渡っている。理由も分からずひたすら走ってはいるけど、ゴールが無いことに気づくが、恋人との約束を破りゲームに没頭していた。仲間と旅行を楽しんでいたが、一時間後の会議を思い出し、パチンコ台の前を無駄に歩き続けている。公園で友人を待っているにも関わらず、ペットに餌をやっていないことが気になり出し、コンビニで弁当を買い駐車場で食べているが、自転車に乗りペダルを力任せにこぎ続けていたら狸をひきそうになり避けたら熊にぶつかってしまう。  お花畑で女の子がうんこをした感情無き世界の完璧な世界観……。
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