風花雪月

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 吠えるではない。  規則的な音が奏でる雨が降っている白く霞んだような景色が描く静かさを、緻密に感じ取るかのように心の奥は、思考回路が時間をかけて犯している罪に蝕まれているのだ。  見透かされているのだ。  泥濘の中に勝手に入り込んでいく愚かさを眺めている不文律の戯れが全てなのだと。  常に進化をしているように見える物こそ、恒久的な存在であり続けたいと願っているくだらない存在であることを認識すべきなのだ。  逃げるではない。  白い包帯で巻き付けて隠された傷口から流れ続ける赤黒い血を見つめ続ける果てに真理を守る重厚な嘘の断片が見えるに違いない。  糞の中でもがくしか道は残されていないのだ。 「あーーー。そういう事か」  マムシに睨まれて身体が動けなくなったときに、改めて感じる事がある。 「それな!」  改めて余りにも軽すぎる言葉だけで、全てが分かり切ってしまったかのような返事をするのだ。  何事も知り過ぎる必要など無いと勝手に頭の中では、責任の存在しない回答を作り出してしまう事を飽きずに繰り返し、麻痺をしてしまった思考は不文律の中に埋もれていき、ヘドロを吐き出し続ける排出器官のように腐蝕してしまった青い血を永遠に垂れ流し続けるのだ。  汚泥をいくら掻き分けても、見慣れた醜いイメージしか出てこない状況を創り上げることに慣れてしまった果てに、泥水が流れ続ける光景の夢が語り続ける物語の中を、飽和状態となった思考を伴い彷徨い続けるのだ。  見えなくなってきた……。  見えない空気は読めない……。 「それな!」 「あーーー。そういう事か」
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