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次の朝、レイモンドがモリスを迎えにきたのは、朝の七時だった。
「待ち合わせの時間、十時じゃなかったですか?」
二階の部屋にまで乗り込んできたレイモンドに、寝ぼけまなこで訊くと、当然とでも言いたそうな調子の返事だった。
「行先にふさわしい恰好というものがあるだろう。とある店で、先に着換えてから行くんだ」
「そういうことは、昨日のうちに言っておいてくださいよ……」
ぶつぶつ言いながら服を着ようとすると、ガウンのままでいい、と言われた。
「なんですって!?」
「なに、どうせ着換えるんだし、移動は馬車だから人の目には触れない。時間と手間の無駄だ」
無駄、という言葉がまさか貴族階級の人間から出てくるとは思っていなかった。
モリスは、そのまま勢いに飲まれるような感じで、ほぼ寝起きそのままの恰好で出かける羽目になってしまった。
レイモンドが ”とある店” と言ったのは、衣装屋だった。
舞台用のものが主な取り扱いだそうだが、とにかくありとあらゆる階層の衣装がひと通り揃えられてある。
これから行く先の説明をすると、店主が自ら、古着の一式を揃えてくれた。
見るからに貧相で、あちこち汚れている。
モリスが顔をしかめていると、店主のマドウォーターは憤慨した。
「見てくれがそれっぽいだけで、実際は、きちんと洗濯した清潔な物ですよ」
そう言われて裏返して見てみると、たしかに、表面ほどみすぼらしいものではなかった。
「……あれ……?」
そして、レイモンドの着替えを待っているあいだ、店のあちこちに吊り下げてある衣装に目をやっているうちに、ふと気づいた。
「あの紫のドレス……」
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