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 ちゃちな鍵を開け、なかに入ると、そこはせいいっぱい小綺麗にはしてあったが、いかんせん家族六人が住むにはあまりに狭い空間だった。  さいわい、今はみんな働きに出ていて誰もいなかったので、閉塞感はずいぶんマシではある。  ドアからは、部屋の一番奥にある、大きな出窓がまず目に入る。 「すげえだろ」  ビリーは自慢そうだ。  たしかに、ろくな家具も揃っていないこの部屋には、不釣り合いとも言えるような洒落た窓だった。  往年は、この建物もそれなりに余裕のある階層の人間たちが暮らしていたのだろう。 「ここに置いてたんだ」  ビリーは窓辺を示す。  右側には用途不明のボロ布が何枚か積み上げてあったが、左側にはたしかに鉢をひとつは置けそうなスペースが空けてある。  レイモンドは近づくと、指先でそこを撫でた。 「土は残ってないようだな。それで、鉢植えがなくなったのはいつ?」  ビリーは両手の指を絡ませながら答える。 「昨日気がついたら、なかったんだ」 「気がついたら?最後に見たのはいつ?」  ビリーは、今度は頭を掻いた。 「……三日前」  その言葉に、モリスは呆れた。  どうやら、本人が思っているより、細やかな世話はできていなかったようだ。 「じゃあ、盗まれた可能性があるのは、その三日間ということになるのか?家族はどうだって?」 「おいらが鉢植え育ててるなんて、誰も興味なかったんだよ。だから……」  ビリーの眉が下がる。  家族の趣味にさえ無関心な家庭で暮らしているのが情けなくなったようだ。  期間が三日間となってしまうと、どうにも可能性を絞りにくい。  レイモンドとモリスは、顔を見合わせた。
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