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 ビリーはといえば、急にみんなの意気が下がったことに戸惑っているようだった。 「ひどいよ、そりゃあ、あんたたちみたいな人たちには、ちっちゃな鉢植えひとつ、たいしたもんじゃないんだろうけどさ……」  またべそをかきそうになっているので、レイモンドが慌てて言った。 「代わりに、新しい鉢を僕が買おうか」  しかしビリーは首をふる。 「自分で育てたから、意味があるんですよ」  モリスはこっそりと助言する。  たしかに、とレイモンドは頷いた。 「周りに聞き込みしてみるか。盗んだところを見たヤツが、いるかもしれない」 「無理だよ、旦那。その手のことに関しちゃ、みんな口が固い。ましてやあんたたちみたいなよそ者相手じゃ」  ライアンが諦めたように言うのにも構わず、レイモンドは颯爽とした足取りで家を出た。  階段を駆け下り、建物の外へ出ると、誰かいないか、身体を回転させるようにして、さあっと周囲を見回した。  しかし、通りすがる者はない。  だが、後から追いついたモリスは、とある窓から覗いている人影に気づいた。 「あそこ、誰かいるようですよ」  その窓は、ちょうどビリーの家と縦に同じ位置にある、一階の部屋だった。  違うのは、ちいさな前庭がついていることぐらいだ。  また建物に入り、該当する部屋のドアを叩く。  しかし、答はなかった。出るつもりはないらしい。  するとレイモンドはノックをやめ、ふたたび建物の外へと飛び出していった。
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