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 それで、少女はついに諦めたらしい。  渋々頷くと、部屋のなかへと招き入れた。  部屋の間取りはビリーのところと一緒だった。  しかし、こちらは物が乱雑に置かれ、同じ広さのはずなのに、かなり狭く見えた。  しかも少女の頬にはできたての青あざがあり、荒れた生活を送っていることが見るだけで感じ取れる。  しかしそんななかでただひとつ、窓際に置かれた瑞々しい植物だけが、浮いていた。  ありあわせらしい貧相な木箱に植えられ、今にも開きそうな蕾がたくさんついている。  その周りにも、似たような木箱に植えられているものが並んではいた。  が、それらはどう見ても道端から採ってきた野草で。  中央に置かれたひとつだけが、まるでゴミ溜めに宝石が落ちているような存在感があった。 「おいらの花だ!」  ビリーが叫びながら駆け寄り、根本の土を指先で掘る。 「ほら!」  そこには、一度土に埋めて隠していた、結んだリボンを蝋で留めたものが見えた。  出品を登録した印だ。 「あんたが盗んだんだな! スージー!」  ビリーが、殴りかからんばかりの勢いで問い詰めようとするのを、モリスが慌てて間に入った。 「暴力はよくない。君も、盗みはいけないよ」 「盗んでなんかいないよ!」  そう叫ぶと、今度はスージーと呼ばれた少女が泣き出した。
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