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 泣きじゃくるスージーをなんとかなだめると、ようやく話を聞くことができた。 「前庭に落ちてたんだよ。だから、誰かが捨てたんだと思ってた」 「捨てる?」  首を傾げるレイモンドとモリスに、ライアンが解説する。 「ここらへんじゃ、窓から平気でゴミや汚物を捨てる連中が多いんだよ。上の階に住んでるヤツなんて特に」  そう言われるとたしかに、道すがら、ぶちまけたような状態のゴミがやけに多かった気がする。  呆れたが、それについて今、しのごの言ってもしかたない。 「あの色の違う土、あれはその跡だね?」  気を取り直して、レイモンドが優しく訊くと頷き、言葉を続けた。 「大切に育てられてるようには思えなかった。土なんかカラカラに乾いてて、葉や花も枯れかけてた。蕾がつくころには、たっぷり水をあげなきゃいけないのに、そんな手間をかけてもらえなかったんだと」  ここでモリスは、ビリーに目をやった。  初めて聞いた知識なのか、驚いたように目を見開いている。  どうやら、スージーの言っていることは事実のようだ。 「ずいぶん育て方に詳しいんだね」  そう声をかけると、スージーはすこしだけ胸を張った。 「住み込みで植木屋の下働きをしてたからね。職人にはなれないけど、たまに植木はいじらせてもらえた。親方が廃業しちまって、家に戻ってきたけど」 「それなら君も、フラワーショーに参加すればよかったのに」  レイモンドが言うと、悲し気な顔をした。
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