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路上掃除人の少年ライアンは、傍らに置いてあるバスケットから、またひとつスコーンを取った。
ウィンバック男爵家のコック、マクミラン夫人自慢のレシピだ。
いくつだって食べられる。
座っているのは、路肩に停めた二頭立て馬車の、扉を開けっぱなしにした床だった。
そこに外向きに腰かけ、足をぶらぶらさせながら、今週見た人間の話をする。
これが、今のライアンの副業だった。
いつもは、わざわざ高級住宅街にある男爵家のタウンハウスまで訪ねていくのだが、今日は趣向を変えてみてるらしい。
その副業を依頼してきた男爵家のお坊ちゃま、レイモンド・ウィンバックは内部の絹張りの座席に腰掛け、手にしたステッキの宝石飾りを手でいじりながら、ライアンの下町訛りの激しい口調に耳を傾けている。
屋根つき馬車の陰になっているその表情はライアンからはよく見えなかったが、時おり抑えた笑い声が聞こえるので、話を楽しんでいるのは間違いないようだった。
もう一時間ほど、こうしている。
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