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「こんな年寄りでも、まだ必要としてくれる場があるとは、嬉しいもんですな」  デイヴィス老は明るい声で言った。 「屋敷でも必要としてるだろう」  レイモンドが言うと、肩を竦めてみせた。 「一応はそうですけどね。寄る年波には勝てませんや。みんな、壊れ物みたいにあっしを扱いますよ。なんだかくすぐったくてね」  そんなことを話していると、ビリーが駆け寄ってきた。 「旦那、外にスージーが来てるよ」 「ああ、ライアンがちゃんと伝えてくれたんだな。デイヴィス、こっちへ」  ちなみに、当のライアンは今日は来ていない。「花にはまったく興味がないので、稼いでいたほうがマシ」なんだそうだ。  モリスも一緒についていくと、会場の外にスージーがいた。  クレマチスを入れていたのと同じような木箱を持っている。  そこには、黄色い花が植わっていた。 「言われたとおり、持ってきたよ」 「ほう。キンポウゲだな」  さっそく、デイヴィス老が覗き込む。 「よく育ててある。自分ひとりで世話したのか?」 「うん。もともとは道端のやつだけど。踏まれる場所に生えてて、かわいそうだったから」 「ああ、たしかに、茎に一度曲がった跡があるな。よく持ち直したもんだ」
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