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 最初は珍しがって覗きに来ていたライアンの仕事仲間たちも、スコーンをひとつずつ貰ったあとは、さっさと自分たちの持ち場に戻ってしまった。  いつまでもたむろっていると、彼らをまとめている親方に売り上げが下がると叱られるからだ。  ライアンのぶんは、レイモンドが前もって見込みぶんを支払ったので、放っておいているだけだった。  そして通りすがる紳士淑女の面々はと言えば、いったん目を見開いたあとは、まるで見てはいけないものを見てしまったように、すっと目を逸らした。  裕福な貴族のステイタスである二頭立て屋根つき馬車はこういう街ではあくまで通り過ぎるもので、長い間の停車、しかも見るからに下層階級の少年が座って口をもぐもぐさせているなど、あってはならないことなのだ。  そんなわけで、まるで昼間の通りに突然現れた場違いな幽霊のような反応を受けながら、馬車はそのままそこにいた。  馬や馭者は、これ幸いと居眠りをしている。
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