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 そんなことを言い出したので、それまで黙っていたモリスは、とうとう口を出した。 「やめておいたほうがいいです。あなたのような身分の人間が、行くところではないです」  その言葉に、ライアンもビリーも怒るどころか頷くばかり。 「そんないい服着てたら、みんなに引っ剥がされるかもしれんです、旦那」  ビリーはそんなことまで言い出した。  レイモンドは小首を傾げていたが、急に眼を輝かせた。 「じゃあ、明日にしようか。君たちの街にふさわしい恰好の準備をしておくから」  モリスは嫌な予感に首を竦めた。  レイモンドがこういう表情をしたときにはろくなことを考えていないことを、すでにもう学習していたからだ。 「モリス、当然君も同行してくれたまえ。明日は仕事も休みだろう」  案の定、そんなことを言われた。 「嫌だと言ったら?」 「じゃあ、僕ひとりで行こう」  予想通りの答に、モリスは長いため息をついた。 「わかりました、おつきあいしますよ。あなたになにかあったら、ホッブス夫人が嘆くでしょうから」  と、ここまで言って、恐ろしいことに気づいた。 「ちょっと待ってください。夕食の時間……」  レイモンドの顔色も、さっと変わった。 「遅刻だ! 急いで帰ろう!」  レイモンドはスコーンをバスケットごとライアンに押しつけるように渡し、明日の朝十時にここでの待ち合わせの約束を取りつけると、馭者に急いで戻るように指示した。
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