迷子にならないように。

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迷子にならないように。

~・~・~・~ 「じゃあ、またね?」 俺たちはナツを交え少しの間、公園で遊んだ。 その間もたーくんは優人(ゆうと)くんのことをよく気に掛けていた。 「うん! バイバイ!」 そう言って優人(ゆうと)くんは手を振り、たーくんはペコリと頭を下げた。 俺はナツを抱きしめ『またね?』と挨拶した。 ナツは『きゅーん・・・』と寂しそうな声を上げたが俺の横に立った夏海(なつみ)を見上げると耳をピンと立て立派な尻尾を振りながら元気よく『わんっ!』と鳴いて優人(ゆうと)くんの握るリードを引っ張り歩きだした。 俺は小さくナツたちに手を振っていた。 その背中にドンッと衝撃があり、振り返るとムスッとした表情の夏海(なつみ)と視線が合わさった。 「めっちゃキス・・・されてたね?」 夏海(なつみ)のその言葉に俺は『は?』と声を発し、なんのことかを理解すると吹き出した。 「何? (なつ)・・・妬いてんの?」 俺は後ろから抱きついてきている夏海(なつみ)の頭を後ろ手に撫で付けた。 「ぶぇつにぃ~?」 そう言って離れた夏海(なつみ)は間違いなく妬いていた。 それが可笑しくて愛しくて俺は夏海(なつみ)に抱きつき返し、夏海(なつみ)の耳元でそっと特別な言葉を口にし、それを耳にした夏海(なつみ)はすぐに機嫌を取り戻した。 「今夜の夕飯・・・クリームシチューがいいな」 そう言って俺の手を握って歩き出した夏海(なつみ)に俺は『え~?』と不満げな声を上げてみた。 それに夏海(なつみ)は『お願い!』と言ってねだるように笑んだがそれはもう用意済みだった。 俺は『わかったよ』と夏海(なつみ)に返事を返し、チラリと後ろを振り返りまた前を向いて笑んでいた。 俺が保護した迷子の『幸福な犬』は余り溢れるほどの幸福を呼んできてくれた。 だから俺はもう二度とこの幸せを手放さない。 「わんわん・・・」 俺は小さくそう口にし、それに『ん?』と言って小首を傾げ、微笑んできた夏海(なつみ)の手を握り直した。 離れないように・・・離さないように・・・。 もう二度と迷子にならないように・・・。
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