出会い。

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出会い。

~・~・~・~ それから俺は1時間近く後天性Ωとなったことで気を付けなければいけないことやこれから飲んでいかないといけない薬の説明を受けた。 それらの大事な説明を俺は適当に聞いていた。 そんなこと、俺にはどうでもよかった。 Ωになれたと言う事実だけで俺はお腹いっぱい、幸せいっぱいだった。 長い説明を聞き終えた俺は『ありがとうございました』と言って頭を下げ、診察室を出た。 診察室を出て自動精算機で会計を済まし、診断書を手に大学病院を出た俺の足取りと気持ちは軽く、ふと見上げた真夏の空は目を見張るほどの青に染められ、どどんと浮かんだ真っ白い入道雲は吉兆に感じられて心踊った。 いつ、(なつ)にΩになったことを話そうか? いつ、(なつ)と番になれるだろうか? だけれど、その喜びは長くは続かなかった・・・。 俺が選ばれるわけがない・・・。 だって俺と(なつ)は・・・。 「唯一無二の・・・親友・・・」 俺は苦々しいその言葉を口にし、ぬるくなったブラックの缶コーヒーの残りをゴキュゴキュと飲み干し、鼻から抜けるコーヒーの残り香に大きな溜め息を吐き出してその昔の出来事を忘れようとした。 後天性Ωとなった俺は高校3年の3月・・・卒業式の日に(なつ)の前から姿を消した。 (なつ)に後天性Ωとなったことを告げることもなく、それどころか『さようなら』の一言もなしに・・・。 「何・・・してるんだろうな・・・」 俺はそう呟いて曇った秋の朝の空に視線を向け、白い息を吐き出した。 「何・・・してるんだろ・・・」 俺はまた同じような言葉を吐き出し、また白い息を吐き出そうと肺いっぱいに冷たい空気を取り込んだ。 そのとき・・・だった。 『わんわん!』と大きな犬の鳴き声に鼓膜を揺すぶられた。 俺はその鳴き声の聞こえてきた方に視線を向け、こちらに駆けてくるゴールデン・レトリバーの姿を認めるとベンチから立ち上がっていた。 なんとなく・・・俺のところに来ると思った。 そして、なんとなく・・・俺のところに来て欲しいと思った。
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