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デートもキスもセックスももうずっとしている。
番になってからずっと・・・。
「真白が・・・特別だから」
そう言って屈託なく笑んだ夏海から俺は視線を反らし、早鐘を打つ胸の内に戸惑っていた。
今さら・・・だ。
「ところで・・・何か考え事してた?」
夏海のその問いに俺は『あ~・・・』と声を発したあと夏海と再会する前に出会った犬・・・ラッキーのことを語っていった。
ラッキーと過ごした日々のこと・・・ラッキーに『ナツ』と名前を付け、夏海のことを思い出していたことも隠さずに・・・。
夏海は俺の話を割ることなく最後まで聞いてくれた。
それは嬉しくも恥ずかしくもあった。
「それからナツ・・・ラッキーの飼い主とは連絡取ってないの?」
「うん。あんまり俺と関わりを持つと良くないと思ったから・・・」
俺はそう答えて目を閉じた。
ラッキーは・・・元気にしているだろうか?
また脱走したりしていないだろうか?
そんなことを思ったとき『わんわんっ!』と聞こえてきた大きな犬の鳴き声に閉じていた俺の目は一気に見開かれ、弾かれたようにベンチから立ち上がっていた。
「真白?」
夏海の不思議そうな声に俺はなんでもないと言い掛けてやめた。
また聞こえた。
大きな犬の鳴き声が・・・。
俺はそちらに視線を向けて目を丸くし、ゆっくりとそちらに足を動かした。
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