輪廻Ⅱ『鳩胸』

3/13
前へ
/13ページ
次へ
「お姉さんもまだ上がってないからね、万が一ってことがあるから気を付けないとね」  義明には意味が分からない。ベッドに入り三回立て続けにやった。そのうち一回は恵子も本気だった。 「時間の延長って出来ますか?」  義明が訊いた。 「あたしはいいけど、もっと若い子と遊んだ方がいいんでないの」 「いえ、あなたが好きになりました」  恋愛経験がなく、初体験でテクニックのある女に入れ込んでしまう若者がいる。義明もその類と笑った。しかし義明はその後も金が続く限り恵子を指名した。恵子が異変に気付いたのは義明が初めて店を訪れてから4週間後であった。危ないと感じていたがまさかの油断だった。恵子は義明に伝えずに堕胎をしようと考えていた。どうせ義明の恵子に対する思いは一時的ものであると分かっていたが、もしかしたら本当に愛してくれているのかもしれないと齢から来る弱気が迷わすのである。一応確認してからでも遅くない。義明が駄目と言えばそれが本望で、もし、育てようなんて言われたらどうしようと年甲斐もなく微笑んでしまう。妊娠は初めてじゃない、三回目である。恋した男と一回、客と一回、そして義明である。年齢からして最後のチャンスでもある。恵子は義明と別れてもこの子を育てようと前向きになっていた。 「おえっ」  恵子は義明の前で大袈裟につわりを見せ付けた。 「大丈夫恵子、悪い物でも食べた?」  義明には恵子の妊娠とまで想像が膨らまない。 「明日、産婦人科に行って来る」 「まさか、妊娠、赤ちゃん、僕達の?」  恵子が頷いた。義明は飛び上がって喜んだ。恵子の予想をはるかに超えた義明の愛を感じた。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加