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「それはダメ」  父からすげなく言われ、(たくみ)は「えーッ!」と抗議の声を上げた。 「えー、じゃないの。ゲームは、クリスマスに買ってあげたばっかりじゃないか。ほかに何か思いつかないの?」 「全然」 「じゃ、今年の誕生日は、巧はプレゼント無しでいいね」 「えーッ!! よくない! ひどい!!」 「それなら、もう少しよく考えなさい。今度、十五歳にもなるのに、情けない」  巧の誕生日は、三月二日だ。  クリスマスから、もう二カ月以上経っている。それなのに父は、巧がリクエストした新しいゲームソフトを買ってくれないと言う。 「でも(かなで)くんには、誕生日もクリスマスも、ロボット・キット買ってあげたくせにー。僕だけなんでー? えこひいき!」  奏は、巧と一学年違いの、高校一年生の兄である。  父は言った。 「奏くんは、将来ロボット工学を勉強したいって、もう決めてるんだよ。君もそろそろ、真面目に将来のことを考えなさい」  巧は頬を膨らます。 「失礼なー。僕だって、ちゃんと考えてます。僕はゲーム作る人になるんだもん! だから今は、いいゲームをたくさんやって、勉強しとかないと!」  やれやれ、と父は肩を落とした。 「ゲーム作る人って言っても、何がやりたいの。プログラマーとか、ゲームのお話を作る人とか、いろいろあるだろ」 「そりゃあもちろん、お話や世界観を作る人ですよ!」と巧は胸を張った。「お父さんはバカにするけど、ゲームは人類に夢と感動を与える素晴らしいメディアなんです!」  人類ねえ、と父は溜息をつく。 「でも、人に感動を与える仕事に就きたい人は、もっと本を読んだり映画を見たり、名作をたくさん知って、歴史や社会や思想や哲学の勉強なんかもしたほうがいいと思うぞ。それに、もっと人間的にしっかりしないとな」 「えー……」  巧が社会科が苦手なことを知っていて、父はそんなことを言うのだ。巧はそう思った。  父は言う。 「とにかく、誕生日過ぎてもいいから、プレゼントはゲーム以外で何か考えなさい。受験もあるし、その後でもいいから。それに、将来のことだって、ゲーム以外にも視野をひろげて考えてごらん」 「またゲームっていうだけでバカにしてー」 「バカにはしてないだろ」 「お父さんはただ、僕を医者にして家を継がせたいだけでしょ」 「そんなことないよ。でも、そんなに簡単に身近なものだけ見て将来を決めない方がいいと思うな。仕事は、医者とゲーム作る人の二種類じゃないだろ。世の中にどんな職業があるのか、もっと広い目で見て探してごらん」 「嫌ですー。僕はゲームが好きなの」 「……お母さんが聞いてたら、がっかりするぞ」 「何その言い方! 卑怯!」
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