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「巧くん、お誕生日おめでとう。もう十五歳になるんだね。今もこのビデオを観てくれてるなんて、すごく嬉しいよ」
モニターの中で、1と5の形をしたロウソクに火を点け、母が両手を振って嬉しそうに笑いかけてくる。
母といっても、家中にある写真と同じように、可愛らしいお姉さんのような母だ。
母は歳をとれないから。
死を逃れられないと知った時、母はこうして巧と奏の毎年の誕生日のために、DVDにメッセージを残してくれた。
今日は巧の十五歳の誕生日だ。
巧は今、父と兄と三人で、それを観ている。
「巧くんが生まれてきてくれたこと、お母さん、本当に嬉しい。出会えて幸せだよ。お母さんの子に生まれてきてくれて、本当にありがとう」
ビデオの中で母が座っている同じダイニングテーブルに、三人は腰かけていた。
巧はテーブルの上で、ぎゅっと拳を握り締め、泣きそうになるのを我慢する。
「今の巧くんには、もうバカバカしいって笑われちゃうかもしれないけど、お母さんね、死んだらお空のお星さまになって、遠くから、たっくんや、かなくんや、お父さんのこと見守っていられるって、本当にそうなんじゃないのかなって、いま信じているの。だから、巧くんが辛い時は、お空のお母さんに話しかけてくれると嬉しいな」
母は毎年同じことを言う。
バカバカしいなんて思ってないよ、お母さん、と巧は無言で思う。
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