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「でも俺さっき、次の発表会に応援に行くって、光と約束しちゃった。だけど俺、会場で応援するのは、少ししんどいよ。どうしよう……」
すると母さんは俺に、スマホを見せて言った。
「確か次の発表会は、スマホでリモート鑑賞もできたはずよ。もちろんリアルタイムでね。優斗も周りに人がいなければ、落ち着いた気持ちで見られるんじゃない?」
俺は確かにリモートなら、今日のような苦しさは少し減るかもしれないと思った。だけど俺は母さんの提案に、納得できない部分があった。俺は言った。
「でも、母さんは今日みたいに、会場で応援するんでしょ。俺一人だけリモートなんて、なんかずるい感じがする。ちゃんと会場に行かないと、兄貴としてかっこ悪いと思う」
するとお風呂から上がった光が、台所に戻ってきた。母さんが光に、これまでの話を伝えた。光は少し驚いたけれど、すぐに笑顔になった。
「私はお兄ちゃんがリモート応援でも、すごく嬉しいよ。だってお兄ちゃんが私を応援してくれてるって、知ってるもん。だから無理しないで、お兄ちゃんに合った方法で応援してほしい」
光の言葉に、俺は感動した。俺は光と握手をした。
「光、ありがとう。じゃあ次の発表会、俺はリモートで応援させてもらうな。だけどどんな形になっても、俺が光を応援する気持ちは変わらないからな。頑張れ、光」
「うん!」と光は言って、笑った。すると傍で俺たちの様子を見ていた母さんが、俺たちを抱きしめた。
俺は自分の過敏な感覚がとても嫌で、矯正した方がいいと思った。だけど母さんや光と話して、人の感じ方にいい悪いはないと思った。だから、ありのままの自分を否定する必要はないのだ。
自分の特性を知って、それに合った対処法を見つけることが大切だと、俺は思った。
俺は自分の気持ちが、前よりもすっきりしたことに気が付いた。俺は光の次の発表会が、少し楽しみになった。
(了)
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