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光の演奏が止まった時、俺は「自分が光だったら、どんなに恥ずかしいだろう」と思った。次に、この状況を観客席から見ている俺自身の立場になって、気まずいなと思った。
俺はさらに考えた。
俺は光の兄だから、光を応援しないといけない。けれど俺は恥ずかしさから、光を素直に応援できなかった。その理想と現実の間にずれを覚えて、俺はさらに恥ずかしさを感じたのだ。
さらに懸命に光を応援する母さんを見たことで、俺はこんな風に感じるのは自分だけなのかとショックを受けた。
つまり俺が恥ずかしいと感じたのは、途中でミスをした光ではない。俺は自分自身を俯瞰して、あるいは他人と比較して、自分自身に恥ずかしさを感じたのだ。
俺は頭を抱えた。そして自分を、兄貴失格だと思った。
※
発表会が終わって、俺たちは家に帰った。俺たちは3人で焼肉パーティーをした。俺は、光に言った。
「光。今日は、お疲れ様。みんなの前で緊張しただろうけど、よくやったな」
光は焼いた肉を食べながら、言った。
「お兄ちゃんが応援してくれたから、最後まで頑張れたよ。本当にありがとう。お兄ちゃん、次の発表会も応援に来てくれる?」
俺は、光をこれからも応援したかった。それは本心だった。
一方で俺は今日のような経験を、もうしたくなかった。だから正直、行きたいとは思わなかった。しかし妹の頼みなので、断りにくかった。
悩んだ末、俺は、「うん」と答えた。すると母さんが言った。
「光。食べ終えたのなら、先にお風呂に入っちゃいなさい」
光は「はーい。ごちそうさまー」と元気よく言うと、お風呂場の方に行った。台所には、俺と母さんが残された。
すると母さんは、俺に優しい声で言った。
「優斗、今日はなんだか様子が変ね。なにかあるんだったら、正直にお母さんに言って。なんでも相談に乗るよ」
俺はこの悩みを一人で抱えるのが、辛くなっていた。俺は泣きながら、光が演奏した時に感じた気持ちを、母さんに伝えた。
「俺は光を素直に応援できなかった自分自身を、許すことができない。母さんはあの時、どう感じていた?」
すると母さんは言った。
「母さんは『光、頑張れ!』って、思ってたわ。母さんは目の前の出来事を、ありのままに受け取るタイプなの。逆に優斗は少し敏感というか、感じすぎる特徴があるのかもしれないね」
多分光も母さんと同じタイプだろうと、俺は思った。母さんも光も気にしていないことを、俺は一人で気にしている。俺はなにをやっているのだろうか。
俺は自分のことが嫌になり、そして怖くなった。俺はおそるおそる母さんに尋ねた。
「これって病気なのかな。ダメなのかな?」
すると母さんは、俺の頭を撫でた。
「ダメじゃないわ。優斗が光を応援したい気持ちも本当。でも恥ずかしく感じてしまう気持ちも本当。優斗のこの2つの気持ちは、矛盾しないと思う。どっちも優斗の素直な気持ちなんだから、無理になくそうとする必要はないんじゃない?」
俺は母さんに自分のことを肯定してもらえて、ほっとした。でも俺にはもう一つ、もやもやしていることがあった。俺は言葉を続けた。
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