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 ――だから、微塵にも思わなかった。あんなに好きだった歌が、こんなにも苦しいものに変わってしまうなんて。 「着いたよ」  仕事が終わり、あかりに連れてこられた場所。そこは、都内にあるライブハウスだった。今日はちょうど誰かのワンマンライブがあるらしく、入り口は開場を待ちわびるファンで溢れている。人垣に気を取られて、誰のライブかまでは確認をする余裕がないまま、私は入口とは反対方向に進むあかりの後をついて行った。あかりは関係者が出入りする裏口へ回ると、近くに居たスタッフに声を掛けた。そして一言二言会話をすると、そのまま中へと入って行く。私は慌てて、あかりの後を追った。当たり前だけど、ライブ前とあって中は慌ただしい。私はいい加減、あかりに説明を求めようと口を開いたが、「あ」という彼女の声によって遮られた。 「ごめん、ゆき。ちょっとここで待ってて」  あかりはそう言って、楽屋と思しき部屋へと入って行った。私は訳も分からず、一人ぽつんとその場に取り残される。サプライズ……なんだろうけど、てっきり今日はご飯でも食べに行くのかと思っていたので、心構えがまったく出来ていなかった。
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