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曲を作るうえで、他のアーティストのライブを見るのは勉強になる。インスピレーションも湧くし、何より刺激を受ける。それは重々承知している。でも……、と私は言葉を濁した。初めて知る、あかりとgraceの関係に驚いたせいもあったかもしれない。
「私……」
言わんとしていることを察したのか、あかりは「大丈夫」と言って私の肩をポンと叩いた。
「ゆきは私の隣に居てくれればいいから。それに、二人には事情を伝えてるから、挨拶はしなくていいよ。急に誘った私も私だし」
ね?とあかりに言われてしまえば、それ以上何も言う事は出来ず、私は小さく頷くしかなかった。
それからすぐにライブは始まった。会場は、観客の熱気で埋め尽くされている。私とあかりはステージから少し離れた後方の壁際に立っていた。
「すごい……」
思わず、感嘆の声を漏らす。ライブの熱気にあてられたのか、それともこの歌声に魅了されたのか……、私はステージから目が離せなかった。ギターのアルペジオから、一気に曲が展開していく。ロック調のアップテンポな曲に会場がさらに盛り上がりを見せた。そして、ベースとドラムのリズム隊がシンクロすると同時に、曲も中盤を迎える。先程と打って変わって、ゆったりとしたテンポのバラード調のサウンドが流れ始めた。それは、切ない恋心を綴った歌だった。
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