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「……今週のオリコンランキング第一位は、今大人気のアイドル【Polaris】です!」
街頭の大型ビジョンに映る女性の明るい声が響く中、私はコーヒーショップからぼんやりとその光景を見上げていた。ガラス張りの壁越しに見える外の風景は、いつもと変わらない。街は常に人と雑音で溢れていた。
また新曲出たんだ……。
移り変わりの激しい音楽シーンで、流行り廃りは本当に早い。音楽を消費文化だと揶揄する人も居るけれど、私はそんな風には思わない。だって音楽は誰かに何かを伝えたくて作っているものだから。曲の数だけ想いがあるのだ。
私は手元にあるタブレットを開き、メモアプリを立ち上げた。思いついたフレーズを幾つか打ち込む。気まぐれなその作業は一種の職業病みたいなものだ。すっかり癖になってしまった行動が、今や私の日常になっている。今日は午後から事務所で打ち合わせだ。予定時間までまだ余裕があるのをいいことに、私はカフェの窓際の席に腰を据えて作業を淡々と進める。すると突然、スっと目の前に影が落ちた。
「お疲れ様」
聞き慣れた声とともに現れたのは、友人であり私とユニットを組んでいる依浦あかりだった。あかりは私の隣に座ると、タブレットの画面を覗いた。
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