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「せ、先生…?」
「高弥くん、可愛いよ」
先生が妖艶な笑みを浮かべて俺を見つめる。
「あっ、ダメッ、先生っ」
雪村の手が高弥のブレザーを脱がしシャツのボタンを外していく。
すぐにその手が肌を這い胸の飾りに辿り着く。
「ぁっ、やぁ、せんせ…」
そっと胸の飾りを指で押しつぶされるとビリリと電流が流れるように快楽が背筋を駆け上がって行く。
「気持ちいい?高弥くん」
俺は何も答えることが出来ず、ただただ鼻を抜ける甘い声を漏らした──
ピピピピピピピピ
「高弥ぁー起きなさーい」
階下から母親の声がする。
三条高弥はベッドに半身を起こした。
なんていう夢を見てしまったんだ…俺はゲイだったのか?
無意識の内に雪村先生の事が好きだったのか?
「高弥―!」
階下からまたもや母親の声が聴こえて高弥は慌ててベッドから出た。
「おはよう、母さん」
「あんた早く起きなさいよ」
高弥は顔を洗って歯を磨いた。鏡に映る自分はクリッとした瞳に弧を描いた唇。女子に可愛いと騒がれてしまうこの顔が俺は好きじゃない。もっと男らしく産まれてきたかった。
「高弥―!ご飯―!」
「はーい!」
俺は食卓に着いてトーストを齧る。
先程見た夢について考える。いや、考えたくないのだが考えてしまう。
雪村彼方先生は高弥が通う予備校の塾講師だ。
そんな相手とあんな夢…しかも男なのに…俺は変態だったんだ!うわーん!
高弥がトーストをぎゅっと握りしめた。甘々のいちごジャムがたっぷりついたトーストを。手がドロドロになって「わー!」と叫ぶ。
「あんた何やってんのよ…もうすぐ大学受験なんだからしっかりしなさい」
高弥は高校二年生とはいえ、そろそろ受験の準備が始まる。
母親が呆れたような目を高弥に寄越した。
あんなのただの夢だ!
決して願望なんかじゃない!俺はゲイじゃない!正夢でもない!
忘れろ!忘れるんだ俺!
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