第十四章

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第十四章

 相楽弁護士は少年の話を一通り聞いていた後、こう聞いた。 「もう一度聞くけど、君は男で、彼も男で、関係は恋人?」 「そうです。いけませんか? 私が子供だからですか? 私が男だからですか? 恋人です。 少なくとも私はそう思っています」  相楽はポリポリと頭をかいた。 「つまり君、朝比奈碧さんが両親を殺したと?」 「はい」 「逢沢千尋さんは誰も殺していないと?」 「はい。彼の弁護をお願い出来ないでしょうか?」 「君が犯人という事は君が捕まる訳だが、それでも良いの?」 「このままでは、彼が死刑になるかもしれないんです!」  碧は泣き出してしまった。  相楽は困ったように腕組みをした。 「お金払える?おじさんの料金高いよ?」 「調べました。 相場よりだいぶ安いようです」 相楽は、苦虫を噛み潰したような顔で少年を見送りながら「受けるかどうかは後日連絡します」と答えた。 第十五章 「禁断の愛ですか。先生は彼の弁護をお引受けになるんですか?」 助手の佐和子が相楽に聞く。 「やらないよ」 「何でですか?彼が可哀想だと思わないんですか?」 「子供の言う事だしね。 言っている事に矛盾が多すぎる。 ま、勝つのは無理だろうね」 「無理って‥‥。 あんな小さいうちから悩んでいるんですよ。 それも禁断の。 禁断の恋なんて、解禁されたら良いのに」  相楽は神妙な面持ちで一服タバコをふかすと、佐和子に言った。 「なあ、結婚しようか?」 「何言ってるんですか。突然。 先生、奥さんいるでしょうが」 「俺たちの関係も解禁されたら良いよな」 「はあ?不倫ですよ不倫。私達の関係は。 解禁されるわけないじゃないですか」 「日本も一夫多妻制になればだな。 お前も大手を振って世間を歩けるわけだし」 「人を日陰の女みたいに言わないで下さいよ。 先生は私の『ただの』金ヅルなんですから『ただの』」 「おいおい‥‥」 「こんなボロビルの一番安い部屋でチビチビと離婚調停の仕事ばかりしているしがない三流弁護士の奥さんになったら苦労しますよ。 ホント、奥さんになってくれた人に感謝しないと罰当たりますよ」 「‥‥酷い言われようだな、俺」 「とりあえず家賃滞納を何とかしないとここ、追い出されますから頑張ってお仕事してくださいね」 「‥‥がんばれ、俺」 「確かに、裁判に勝ててもあの子達が幸せになれるかどうか‥‥。 とにかく、あの子に仕事受けると伝えて来ます」  佐和子は笑顔で言うと、少年の後を追いかけて行った。  相楽はそんな彼女を可愛いと思った。 (おわり)
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