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第十二章
早朝、部屋のドアを激しく叩く音がした。
ドアの覗き穴から外を見た彼は言った。
「最後だから言っておく。
誰がなんと言おうと俺はお前が好きだ。
だから誰に何言われようが胸を張って生きろ。
羨ましいだろ、ざまあみろって」
私は彼を強く抱きしめた。
窓を開けるとアパートの周りには警官がこちらを見上げている。
そして彼はワザと彼らに見えるように私の首を絞めた。
「‥‥いいか、全ては俺がやった。
だからお前は何も証言しなくていい。
俺が勝手にやった事なんだ」
首を締めながら、彼は涙を流していた。
乗り込んで来た警官に取り押さられ、彼は逮捕された。
二件の殺人容疑、窃盗、未成年者誘拐、暴行の現行犯。
私が泣き叫んでいる中、彼はパトカーの中に消えて行った。
父さんの事件を他殺と見ていた警察が、目撃者証言から彼をマークしていたらしい。
彼は万が一の事を考え、私に迷惑がかからないように証拠を残していたのではないだろうか。
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