第十三章

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第十三章

 違う。  犯人は私だ。  彼は私を庇って、罪を被ったんだ。  私は母さんの車のブレーキオイルのコードを切り、母さんを殺した。  母さんが死んだ時、私は監禁されていなかった。  父さんが嘘の証言をした。  父さんが死んだ時、父さんは書斎に居なかった。  父さんは私と監禁部屋にいた。  発作で喘いでいる父さんにしがみついて、薬を飲ませなかった。  栄養失調でフラフラになりながら、心臓が止まるまで。  それから父さんの死体を書斎まで運び、パソコンで遺書を書いた。  そこに彼が尋ねて来た。  連絡が取れないのを心配して来てくれたのだ。  彼がアリバイ作りの為に私を部屋に閉じ込め、鍵をしてくれた。  動機は、両親が男の人と付き合うのをやめさせ、彼を同性愛者として嫌がらせをしてアパートに居られなくさせた事。  父親が私にした事。  母親がそれを見ぬふりをして、折檻した事。  二人がいなければ彼と暮らせると思い殺した事。  ‥‥いえ、分かってます。  両親が亡くなっても幸せになれない事くらい。
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