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第一章
…どうしよう。
心臓がドキドキする。
ぎゅっと目をつぶっているのに、ずっと眠れなかった。
眠ってしまえればよかったのに。
…泣きそうだ。
やがて足音が聞こえる。
私の部屋の前でピタリと止まって、扉がノックされた。
「‥‥入るぞ」
父さんの声がする。
心臓の音が、いっそう大きくなった。
布団をアタマから被る。
息を殺して‥‥。
殺して‥。
布団は捲り上げられ、抱きしめられた。
背筋がゾッとする。
これは教育だ‥‥
そう耳元で囁く父さんの荒い息遣いが聞こえる。
嫌だ‥‥
嫌だ‥‥
嫌だ‥‥
叫ぼうとすると、父さんが口を押さえた。
私は気が遠くなり、気を失う。
気がついた時には、父さんは居なくなっていた。
全身、汗びっしょりだった。
夢だ、そうだ、これは夢なんだ。
子供だった私はそう思うしかなかった。
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