1.空気感

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彼女に連絡しないまま、1週間が過ぎた。 忙しくしている時は忘れているものの、ふとした時に、彼女のことを思い出す。 今もそうだ。 だいたい週に一度の割合で勤務している、母校の大学病院までの道を歩きながら考えていた。 そういえば、片頭痛はもう大丈夫なんだろうか。 あの時、聞けばよかった。 人と話すのは苦手ではないけれど、気軽に話しかけたり、電話したりできるわけじゃない。 「いつまでたっても、電話は無理だなー」 そんなひとり言をつぶやきながら、俺は研究室に向かった。 「おぅ、西島。今朝は早いな」 俺の恩師、高浜(たかはま)教授が白衣に袖を通しながら、ドアを開けた俺の方を見る。 「おはようございます、高浜教授。昨日は日勤で、夜に呼出しも無かったので相当寝ましたよ」 「なるほど、顔がスッキリしてる。ところで、例のデータ見てみたか?」 「はい、ざっと目を通しました。オペ(手術)の成功率も上がってましたし、今日少し内容整理して資料に落とします」 「頼むな。俺、9時から教授会なんだよ。1時間ほど席外すから、ここよろしく」 そう言うと、ノートパソコンを片手に部屋を出て行った。 今日、研究室には俺ひとりだ。 もうひとりの先生は、学会があって出張だと聞いている。 買ってきたコーヒーを飲んで、俺はノートパソコンを起動しデータを調べ始めた。
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