1.空気感

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読み進めていると、使われている英文の表現にちょっとクセがあり、分かりにくい箇所がいくつかあった。 「これ、どういう言い回しだろうな・・」 ぴったりハマる日本語が思い浮かばない。 近い事象がないか、いくつか文献を調べてみる。 コンコンコン。 ノックする音が聞こえ、立ち上がってドアに向かいスライドさせた。 「はい・・えっ?」 「おはようござ・・えっ・・西島先生?」 開けたドアの向こうにいたのは、彼女だった。 どうして、ここに? 「あ、どうぞ。といっても、今は僕しかいないんだけど・・。高浜教授に用ですよね?」 「ええ。外科の白坂教授から、文献とデータを渡してほしいと頼まれて」 「そうなんですね。平嶋さん、白坂教授がクライアント? 高浜教授からは平嶋さんのことを聞いたことが無いし、うちの教授は英語が堪能だから」 「はい、白坂教授のお手伝いをさせていただいてます」 俺は彼女から、冊子とデータの入ったUSBを受け取ってキャビネットに閉まった。 それにしても・・だ。 「まさかここで平嶋さんに会うとは思わなかったです」 「本当にびっくりしました。でも、西島先生どうしてここに? あ・・ごめんなさい、お仕事中に。お邪魔でしたよね、失礼します」 「いえ、そんなことは・・」 もう少し、話がしたい。 何か話題は・・。 「そうだ! 平嶋さん」 「はい?」 「ちょっと・・教えてほしいことがあって。少しだけ、時間ありますか?」 俺は彼女を呼び戻した。
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