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素敵・・。
俺の人生で、そんなことを言われたのは初めてだ。
『ネクタイ姿』って言ったよね?
『ネクタイが』とは言ってないよな?
俺は普段・・・・総合病院にいる時はスクラブ(医療用ウェア)に白衣を羽織っているけれど、子供たちに接するときは白衣を脱ぐ。
白衣=医師のイメージで、余計な緊張を与えたくないからだ。
他のスタッフと同じ格好で、病気を治してくれるオトナたちのひとりだと思われるくらいでちょうどいい。
でもここでは診察もしないし、教授の研究をサポートしていることもあってスーツで出勤していた。
でも彼女・・。
なんなら『ネクタイ姿も』って言ってた・・。
どっちも・・?
「お、西島、出迎えか?」
戻ってきた高浜教授に声をかけられ、ハッとする。
「あ、お帰りなさい・・」
「なんだボンヤリして。そういえば、外科の白坂教授から本とデータ届いたか?」
「はい、少し前に。キャビネに入れたので出しますね」
さっきは気づかなかったけれど、取り出した冊子には所々に付箋がついていて、彼女のメモが書かれていた。
「白坂教授、美人の翻訳家さんと仕事してるんだよなー。西島も見たか?」
「はい。さっきここに来たので」
「俺も西島じゃなく、彼女と仕事したい」
「うわ、ひどい。高浜教授の好きなカフェモカ、もう買ってきませんよ?」
「それは困る。悪かった!」
彼女は、あちこちで気に入られてるんだな・・。
そう思うと、少しモヤッとした気持ちになった。
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