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彼女が自分を出すのは、どんな時なんだろう。
もしかしたら、本当に辛い時だけなんじゃないか。
初めて会った日のような、どうしようもない時だけ。
俺に抱き上げられたこと。
俺の手を握って離さなかったこと。
俺の前で眠ってしまったこと。
おそらく、普段の彼女ではありえないことなんだろうな。
「・・西島先生?」
「あ、うん。平嶋さん・・お腹空いてますか?」
「えっ、まぁ・・」
「一緒に、点心食べませんか? 近くに美味しいところがあって」
元々、夕方だし食事に行こうとは考えていた。
俺は寝起きで、きっと彼女は帰宅後に仕事をするだろうから、軽めの食事がいいんじゃないかと思い、点心を提案した。
あ、でも、いきなりふたりでの晩メシは、まずかったか・・。
「あの・・。本当にご一緒していいんですか? 怒られたりしません?」
ん、怒られる?
誰にだ?
「奥さまとか、彼女とか・・・・」
彼女の声が小さくなる。
「・・アハハ、そういうことですね。誰に怒られるのかと思った」
「だって・・私はこないだ先生に送ってもらってるし、迎えに来てくれるような人がいないって、バレてるからいいんですけど・・」
そういえばそうだった。
ひとりで帰すわけにもいかないと送っていったものの、そういう人がいれば、俺が送っていく必要もなかったのか。
「僕も、後から怒られるようなような人はいないから。平嶋さんさえ良ければ、一緒に食べにいきませんか?」
俺は改めて、彼女を誘った。
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