1.空気感

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彼女が自分を出すのは、どんな時なんだろう。 もしかしたら、本当に辛い時だけなんじゃないか。 初めて会った日のような、どうしようもない時だけ。 俺に抱き上げられたこと。 俺の手を握って離さなかったこと。 俺の前で眠ってしまったこと。 おそらく、普段の彼女ではありえないことなんだろうな。 「・・西島先生?」 「あ、うん。平嶋さん・・お腹空いてますか?」 「えっ、まぁ・・」 「一緒に、点心食べませんか? 近くに美味しいところがあって」 元々、夕方だし食事に行こうとは考えていた。 俺は寝起きで、きっと彼女は帰宅後に仕事をするだろうから、軽めの食事がいいんじゃないかと思い、点心を提案した。 あ、でも、いきなりふたりでの晩メシは、まずかったか・・。 「あの・・。本当にご一緒していいんですか? 怒られたりしません?」 ん、怒られる?  誰にだ? 「奥さまとか、彼女とか・・・・」 彼女の声が小さくなる。 「・・アハハ、そういうことですね。誰に怒られるのかと思った」 「だって・・私はこないだ先生に送ってもらってるし、迎えに来てくれるような人がいないって、バレてるからいいんですけど・・」 そういえばそうだった。 ひとりで帰すわけにもいかないと送っていったものの、そういう人がいれば、俺が送っていく必要もなかったのか。 「僕も、後から怒られるようなような人はいないから。平嶋さんさえ良ければ、一緒に食べにいきませんか?」 俺は改めて、彼女を誘った。
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