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「あの・・先生、お願いがあるんですけど・・」
「お願い・・ですか?」
「薬の効き目が強くて、少し・・眠くて」
「あ・・横になりますか? この先に簡易ベッドがあるので、良ければそこで」
頷いた彼女を、車椅子に乗せたまま連れて行く。
一瞬迷ったものの、薬の効き目でウトウトした状態になっているのだろうと思い、抱き上げてベッドに寝かせた。
さっき車椅子に乗せた時も思ったけれど、小柄なこともあって軽かった。
俺が182センチで、頭ひとつ分以上の差があったから・・彼女は155センチくらいかもしれない。
すぐに寝息が聞こえてきたが、ここにひとり残して行くのもどうかと考え、俺はベッド脇の椅子に腰掛ける。
「大翔に貸しひとつだな・・」
落ち着いて眠っている彼女を見ていたら、俺もなんだか眠くなってきて、椅子に座ったまま壁にもたれて瞼を閉じた。
「西島先生・・?」
誰かに呼ばれた気がして目を開けると、上半身を起こして起き上がっていた彼女と目が合う。
「あ・・具合は? 痛みや寒気は?」
「は・・い・・なんとか」
無理に笑顔を作ろうとする彼女に近寄り、額と首筋に手を当てた。
「無理に笑ったりしなくても大丈夫。我慢もいらないし。んー、熱は無さそうだし、冷や汗も治まったようだけど・・・・帰れそうですか?」
「はい。タクシーで帰るので、多分平気です」
「・・じゃあ、近くまで一緒に行きますよ。このままひとりで帰して何かあったら、大翔に怒られそうだから」
そう言うと、彼女は苦笑いを浮かべた。
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