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「え・・。西島先生?」
角を曲がってすぐのところにあるコンビニから、彼女が出てきて俺に気づく。
不思議そうに俺を見つめる彼女に、言葉が出なかった。
「あ・・えっと・・その・・。出歩いて、平気?」
「・・・・もしかして、心配して戻って来てくれた・・とか?」
まだ息が上がっている俺に、彼女はそう言った。
俺は上手くごまかす理由も思いつかず、素直に返事をする。
「・・はい。ちゃんと部屋に入るところまで、見届ければ良かったと思って」
それを聞いて、彼女は微笑んだ。
「もう大丈夫です。でも、ありがとうございます。あ・・これ、良かったらどうぞ」
袋からペットボトルの水を取り出して、俺に差し出す。
すぐ近くにある公園のベンチにふたりで座り、俺はもらった水を飲みながら聞いた。
「大翔の・・大学の同級生なんですよね?」
「はい。西島先生は、ハルの同期ですか? 仲良さそうだったから」
「ハル・・」
「あー、大学のサークルでみんなに『ハル』って呼ばれて」
「・・あ、なんだ、そういうことか」
「え?」
「あ、いや・・。大翔も『茉祐子』って呼んでたから、結構近しい関係なのかなって勝手に思ってました」
「友人ですよ。同級生は下の名前で呼び合う感じのサークルだったので、みんな私のことも『茉祐子』って呼んでたかな」
ふふふ、っと笑う彼女を見て、なんだかホッとした。
痛みも落ち着いたように見えるし、大翔との関係もそれほど深いものではなかったから。
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