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第二話
ひとつの恋のような物が終わった中学三年、そして同級生に恋をした高校一年、悩んで友達から一つ上の関係になった高校二年、又ひとつの恋を終わらせようとしていた高校三年のあの日。
卒業式が終わり、俺たちは校門の前で待ち合わせをしていた。
「ヒエー、見ろよこれ」
見事に袖口のボタンさえなくなった学ランを見せびらかすように、パタパタと振るやつ。
「帰るぞ!」
「あ、オーまって、この後何時だ?」
「うちのクラスは、着替えたら、直行だって、いいホテルなんだから少しは格好付けてこいだとよ」
「何だよ格好付けろって?何すんだよ?」
ダンパするんだと?
そんなのあったっけ?
あったんじゃねエーの、聞いてねえのか?その傍らでスマホをいじる。
「誰だよ幹事、教えくれねえんだよな?なあ、ひでーとおもわねー?」
「その幹事けったの誰?自分の胸に手を当てヨーク考えろ」
手を当て考える人が後ろにいる。
「馬鹿、行くぞ、そのままでいいんだとよ」
「助かったー、はー、一丁裏汚したくないんだよな」
そうだ、俺の貸そうか?
お前の?たいしたものないんだよな。
じゃあ貸さね。
アーうそ、うそ、貸してください。
俺の学ランも何もねえじゃんといいながら身体を触り、肩に手を回したやつ、俺はその時間に幸せを感じていた。
この恋が後数日で消える、だから精一杯楽しもうとしていた。
香山祐一、高校で三年間つるんだ。
そして絶対言っちゃいけない。親友という枠を壊しかねない言葉。枠にはめ込んだ、モナリザのように、そこから出すことは一生できない言葉を、言おうとしていた。
そしてそれは、かなわない恋で彼を目で追うことはこの先できなくなる。
祐一を好きになったのは一年の春、入学式の日、一目ぼれだった。
俺より背の高いのは少ない、同じくらいの身長と真面目そうなその容姿に、心がぐらりと動いた。
友達になろうと俺から言う勇気はなくて、きっかけを作ろうとしたがなかなかすぐには声を掛けられなかった。でもその日、俺は神様にありがとうと感謝した。きっかけができて、俺は何気なくそれを実行した。
何気なくあいつの机のカンペンの中に、こいつを置けば。
「え?あ、おい!」
俺は知らない顔で、トイレに行くダチを追いかけた。
教室に戻ってくると、祐一の机の上は、山ほどのお菓子。
それを見て大笑いした。
それから俺たちの距離はぐっと縮まった。
そして二年の秋、俺はそのとき、死んでもいいと思うほど落ち込んだ。オヤジに殴られ家をオン出された一年の夏よりも深い傷を負っていた。
でも、祐一に助けられた。
それを言うとそんなことあったかというほど祐一には些細なことだったかもしれないが、俺にとっては目を覚まさせてくれた、祐一の存在がいかにありがたかったか。
男らしいというのは、何かを守るときに発揮する。
そして、あの日、俺の手を引いて、あそこから駆け出してくれた。
俺はあの日のことを鮮明に覚えている。
祐一はもてた。俺に比べたら、たいしたことないというけど、俺は女たちに嫉妬の目しか向けられなかった。
俺が女なら、俺が女だったら。
その先には明るい未来が待っていたかもしれない。
でも俺は男で祐一の隣に並べるのは友達だからで、それ以上、何も望めない。
望んじゃいけないと思っていた。
俺は祐一のそばにいたくて、一年の夏休みから同じバイト先で雇ってもらった。
俺たち学生のリーダー、社員の木村さんに俺が祐一のことを好きなのか?といわれ、まさかと答えたことがあった。
それから木村さんは、何かと俺にちょっかいを出すようになっていて、めんどくさくても上の人だしと思いながら、まあ、仕事場ではいうことを聞いていた。
そうだ、あれが二年生の秋、ちょうどバイト一年立ったある日のことだった。いつものように二人分の弁当を持って祐一に近づいたら、女子が割り込んできた。祐一は、それをうれしそうにもらっていた。
ただそれだけだ。
でも俺は落ち込んで。
それを木村さんに見抜かれた。
「ふーん、嫁?」
誰がですか?
あの子?
知りませんよ。
香山のこと好き?
「好きですよ?それのどこが悪いんですか?」抱えた弁当を見ているから、思わず隠した。
ゲイなんだもんね?
ドキンとした、隠していたけど、見抜かれたか?
「ちがいますよー、そう見えます?」
別に隠さなくてもいいジャン俺偏見ないし、なあ今晩暇?
ま、まあ・・・。
「じゃあさ、いいとこつれてってやるよ!」
俺は簡単についていってしまった。そこがどんなとこかも知らずに。
一度目は、ものすごい音楽の中に体を預けただけで、女がいても気分が良かった。二度目は知らない人と大声で話をしたのでなんとなく発散できた。
三度目、周りを冷静に見た、ここ、やばいかも。そう思って、木村さんより先に出ようとした。
「だめジャン、まだお楽しみはこれから」
「明日も学校だし、帰ります」
まじめー。
休んじゃえよ。
すみません、俺、かせがないと借金あるんで。
マジかよ。
いくらー、貸してあげようか?
「帰ります」
でも、無理やり飲まされた酒で、記憶を飛ばし。俺は学校もバイトも無断で休んだんだ。
たぶん、夜だ。時間は覚えてない。
俺はふらふらになりながらも外へ出たんだ。
「恭平?」
その声にこたえようとしたんだけど、体が動かなくて。
「恭平!」
「た、助けて!」
何かごちゃごちゃ言ってる声がしたけど、俺は祐一に引っ張られた。
その手がやさしくて、肩を抱き、俺を抱いて走り出した、その時の事を鮮明に覚えている、ただその後、引っ張られて気がついたら部屋にいた。
飛んでしまったようだ。
「おきたか?ほら水飲め」
ごくごくと飲んだ。でものどが渇いてしょうがなくて。
「はきたい」
「よし、トイレ行こう」
肩を借り、トイレに向かった。
すると玄関のほうに男の人がいて電話をしている。
「おー、おきたか?」
店長?
「戻したいそうなので」
「ああ、早く行ってやれ」
俺は、腹の中に何も入ってないのか、戻しても今飲んだ水しか出てこないようだった。
背中をさすってくれる祐一。
出てきて、俺はやっと、何が起きたのかを知った。
酒を飲まされ、いたずらされたんじゃないかといわれた。お金を取られなかったかとか聞いてきたがそこまではされてはいなかった。
俺が外にでなければ知らないことだったかもしれないが、外にでたことで発覚されたのは、未成年たちを集め、お金を取ろうとしていた。男には酒を飲ませ、女性を裸にし写真を撮って親に見せ金をだまし取る。アルバイト達の履歴書から親元をたどりだましていた、そんな事をしていたという。
木村さんには辞めてもらうという。警察も入ったらしい。
店長さんには、やめないできてくれといわれた。俺には非はない。
お世話をかけましたといったらゆっくり寝ろといわれた、そして。
「いい友達を持ったな、大事にしなさい」
店長はそういって帰られた。
でも俺はそれから苦しくて、苦しくて。
のどから、火が出そうで、それとあそこが痛くて、痛くて。
「帰れ!」
「帰れねえだろ、大丈夫か?」
「触るな!」
どうしたんだよ!
呼吸も荒くなってきて、俺はトイレの前に座り込んだ。
「みずか?」
「触るなー!はあーはあー!」
どうしたんだよー。
ほっといてくれ、帰れ、頼むー。
「何だと!ほっとけるか!苦しいんだろ?」
俺はくの字になりあそこを抑えていた。
すると急に体が軽くなった。
「いいよ、歩ける」
「黙ってろ落とす!」
お姫様抱っこかよ。
だまってろ!
リビングのソファーに投げ出された。
そして部屋からいなくなると、何かを持ってきた。
「ここならいだろう」
布団を引き始めたんだ。
かえってくれ。
俺はソファで縮こまった。
「恭平」
それに顔を出した。
水を飲む祐一の顔が近づいてきて。
キス?
水が口の中に入ってくるのがわかる。
その水を飲んだ。
「もっとー」と俺は手を伸ばしていた。
「お前、口の中熱い、待て待て」
そして二度目、俺は抱きつき、口を離さないでいた。
びく、びくと痙攣したように下半身がうずきだした。
「おい、つめた、もらしたか?」
俺は手を伸ばし、祐一の顔にキス、口にすいつこうとしていた。
そのとき、あそこに祐一の手が触れた。
「んーー、あはーあーーーー」
「え?何?出した?」
「はあ、はあ、祐一-、苦シーよー」
わかった、我慢するな、出しちまえ。
その後の事は覚えていない。
朝、目が覚めた。目の前に眠る祐一に、二度見、そしてドキドキ。
寒!
裸?隣も裸?
思わず、布団の中、したから上まで、なでるように見た。
見て、見て、祐一のすべてを目に焼き付けた。
「おきたか?」
まぶしい、美しい。
「さムー、シャツ貸せ、風呂は入れるか?ヤベ、俺も借りるわ」
まっぱの祐一が俺のシャツを引っ掛け風呂へ行った。
その後姿もいい。
スマホがあったなら絶対、連射で写真を撮っていた。
「寒さむ、入れろ!」
風呂のスイッチ入れてきたといいながら、布団に入ると、少しの時間で冷えた体を俺のはだに引っ付けた。
びくっとして逃げたら、逃げるなーといって抱きつかれた。
「さすがにもうたたねえな」
と俺の股間を見ているから俺も思わず見ると、タランと横を向いていた。
「良かった、良かった、今日全部洗濯だな、起きようぜ、学校だし、風呂行こう」
俺は祐一に洗ってもらった。
これで最後、いい思い出。
「傷だらけだな、ここいたくねえか?」
明るいところで見たら、あちこちに擦り傷やあおたんがあって、どこでどうつけたのかわからなくて、触ってくる祐一とじゃれ合いそれに笑うしかなかった。
「おいで」
湯船に入ると、狭い中で、俺は祐一に抱かれながら入った。
それが最初で最後。
卒業したらもう、祐一と会うこともなくなる、そう思っていた。
でも、今は、ムフッ、ムフフ。
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