第九話

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 姉ちゃんちに行くと、ちびたちをつれて帰ろうとした祐一を止めた。寝ているからそのままで良いと。俺たちに話があると、リビングへ向かった。 「で、なにやらかしたんだ?」  裏金、税金逃れだそうだ。多額の金を出して便宜を図ってもらったとある会社からの流れで発覚。それで動いた金の調査だ。それが表に出た。  社長はすぐに親父の名前を言った。だからこんな事になったそうだ。 「あの親父がそんなことできるのか?」 「だからよ、うまく使われたんでしょ、まったく、で、母さんのほうは?」 「連絡すらきやしないわよ」  何の話だ?  離婚、書類を出してもきやしないという。何度目?裁判にしたらと言う姉に、金がかかるという母。 「死んでるんじゃね?」 「まさか?」 「できないわよ、無理、無理」 「海外は?」 「あの人がひとりで生活できると思う?」 「やっぱり女か?」 そう考えるほうが妥当でしょうねだって。  俺が中学一年のときによく家に来てた女知ってる? 何よそれ? そんな事あったかしら?という女二人。 「ちょうど姉ちゃんのあれがおきてから見なくなったけどな」 あれ? 忘れたいのはわかるが、親父のせいで、姉ちゃんは怖い思いをしたことがある。 会社で、親父のやることに我慢できなくなった人たちが姉ちゃんを襲ったんだ、未遂で終わったけど、ちょうどそのころ、親父は昼真っから堂々と女を家に入れていた。 テスト習慣で早く帰ってきたら、しらねえ女がいてさ、姉ちゃんが貸してる隣の人かと思ったんだ。 でもその女はオヤジの部屋に入っていった。 泥棒?と思った。 けど、オヤジの上にいた女は俺がいるのをわかって、親父の上にまたがっていた。それから何度も来た、それは二人とも知っている人だと思っていた。 俺はその女に襲われた。殴った、親父もそれを知っているはずだ、だってけしかけたのはあのくそ親父だ、俺は家を飛び出した。 女の容姿を話すと姉ちゃんは、立ち上がって、ベランダのほうへ行ってスマホで何か話している。 「俺さ、それが気持ち悪くて、それから女がいやになった、まあ、母さんと姉気は何とかなったけど」 「・・・そう、知らなくて、ごめんね」 母親が俺に始めて誤った。 隣で俺を引っ張る人。ここにいて良いのかというから、いてくれと頼んだ。 「恭平、お茶入れて」 へい、へい。 俺もといって祐一も並んだ。  姉貴が戻ってくるとその話をする母親に、姉貴は。 「母さん、ちょっと周りがうるさくなるけど、覚悟してね」 「そうね、はー」といいながらお茶を飲んだ。 「さて、そういうことで、何とかなりそうだから、ご飯食べて寝ようか?」 あいつらは? お弁当、好きなのかってたべてって、はい、みんなの分。 なんかあったかいの作ろうか? 頼むわーという姉。 冷蔵庫の中にあるもので卵とねぎ、かき玉汁を作り出した。 子供たちが寝ている部屋の戸が開いた。 「あー、いいなー」 「お、雄太おきたか?」 今からご飯? 今帰ってきたんだといったら、おいしそうとのぞいていうのでスープだけな。 トイレは?行ってきたという。 すると、アー、お兄ちゃん、ずるいーといって理香、そして裕次郎もおきてきて、結局みんなでスープを飲んで、ねた。 明日は土曜日でよかったわという母親、ゆっくり寝て、明日の朝おいしいものを食べに行きましょうといったのだった。 やった、おごり? そこは出すわよ、と母親、やった。  祐一と二人、兄弟たちが寝る端に何とか収まった。 なあ、さっきの話、初めて聞いたんだけど、お前の初恋の中学の先生ってその人?このことを知ってるの?  知ってる、親身になって聞いてくれた。  それは姉の事もあったからだ。  俺は男たちにぼこぼこにされながらも姉ちゃんを守った。俺の一番大事な人を失いたくなかった。  母親は何とか来てくれたものの、親父は来ることはなく、姉の学校の先生と俺の担任はそのことを隠すことにした。  姉の将来を守るために。  親父はそれを知って安心したんだろう、図に乗って会社ではぶりを聞かせているのか知らないが、したのものたちの不満は膨れ上がりそれが子供に行った事実を知らぬ存ぜぬで塗りつぶしていった。 俺たちは人間として最低なものを知り、父親として認めなくなった。 父親は、姉だけのいう事を聞くのは、たぶんそのときの後ろめたさがあるからだと思っていた。でも案外姉のほうが上手で、社会に、親父のことをばら撒かれたくなければいう事を聞けといったところだ。姉は何時も俺を守ってくれ、俺は姉を守ってやれない。 「俺はどうしたらいいのか、わからなくなっていって人間不信になってさ、先生に救われたけど、女は手が触れるのもいやなくらいだめになって言ったんだ。今は、ある程度は良いけどな」  すっと手が伸びて来て祐一が抱きしめてくれた。  俺も一緒にお姉さんに恩返し、させてくれって、俺は祐一の胸の中で泣いていた。 朝、みんな帰るわよ、ご飯食べに行きましょと、外へ出たのだった。  朝早くに電車で出かけた先は、築地。外で始めて食事をしてはしゃいだ下二人。荷物を背負い、俺たちは帰ってきた。 明日の分の買い物もしっかり買ってもらい、いっぱいの荷物だ。 周りに人はいるが気にはならないだろうし、親父が接触してくる可能性はないだろう。
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