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ホーホケキョ。
遠くから春告げ鳥のこえが聞こえる。
ぼーっとした耳にはよく聞こえる声だった。
「ではこれがカギです、大家はこの先を右に入って二つ目の路地の向こう側にあるのでお電話してから行ってくださいね、昼は留守してますから」
はい、ありがとうございました。
えーと次は、大学生だな。
走って行くと兄貴の鞄が玄関にある。
「冷蔵庫や洗濯機は備え付けだけど古いから壊れたらそっちもちな」
「はい、ベッドとかもいいんですか?」
「使えるのはとことん使って、遊びより大学卒業目指すなら、金はかからない方がいいからな」
「ありがとうございます」
「あとは話し合いで決めてくれ、エアコンは新品だけど壊れたらそっちでしてくれよな」
「とにかく、隣と問題は起こさないように仲良くやってくれ」
「お隣家族ですよね」
「上京してきたばかり、お前らと何ら変わらないさ、頼むぞ後輩」
「「「はい、ありがとうございます」」」
「兄貴、終わったぞ」
「こっちもだ、不動産屋に言って挨拶して来よう」
「キョウちゃん寝てるからな」
「そうか、さて晩飯は」
「そっちは雄太、兄貴はやる事あるんだ、頼むよな」
おう。
「終わったー」
「やっとーだ!」
休みのたびに荷物を運び入れたのはいいが、三件分の荷物。
百合さんと彼氏さんの荷物も預かっている。
帰ってきたら泊めろと部屋に物を入れ込んだのがやっと終わった。
彼氏さんが住んでいたマンションは三人家族、恭平の家は、四人家族で仕事で上京、家を探していた人たちが入った。そして俺たちが住んでいたところは恭平の大学に入った新入生が三人で借りることになった。
おかん気質の恭平は母親、兄の役目を、そして姉の残したことの片付けとそりゃ一人で抱えるんだ熱も出すさ。
ただいまの声に目を開けた。
「起きたか?どうだ?」
マスクをした顔が近づき、おでこにおでこをくっつけた。
「下がったみたいだな、ほら、体温計」
ん、と受け取り脇に入れた。
「風邪うつるからとなりに行けよ」
「そうするよ、しんどかったら明日病院だな」
「ごめん」
ピピと音がした。
「だいぶ下がったな」
みんなのおかげ。
「理香がおかゆ作ってるから寝てろ」
トイレ行って来る。
起きれるか?と支えてくれる、そこまでしなくてもいいよ。
祐一は、今日、家に人がみんな入った話をした、不動産屋にも挨拶してきたそうだ。
そして俺に何でもかんでも一人でやりすぎと言われた。夫夫何だから、俺にもやらせろという。
ごめん。
トイレから戻ってくるとおかれた土鍋と水と薬、そして桃の缶詰。
「缶ごとかよ」
と言った祐一におかしくて笑いだした。
「食べさせてやろうか?」
それに丁寧に断ったけど、祐一はまだ仕事着のスーツのまま、布団の横にあぐらをかき、今日の出来事を話していた。
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