第四話

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 前のバイト先は高校に近かったから、都合が良かったけど、大学に入ると反対方向で遠くなったので俺は、祐一がぎりぎり三月一杯までいたスーパーを五月までいてやめた。今は家に近いコンビニに変更。コンビにも最初は良かったが、一ヶ月過ぎると、ブラックかしてきて、ダチに聞くと、まだ良いほうだという。  アルバイトでもしんどいのに、就職したら、どんな未来が待っているのか、こえーよなと話していた。祐一だけじゃなく、高校の時のダチなんかとも会えることなくいたんだ。  七月に入り大学も落ち着き、大学の中にも友人ができた。夏休みに入る。アルバイトもただボーっと来て金をもらっている感じだった、そんなある日。 店の前には、パン屋のトラック。商品が運ばれてきたんだなと思いながら、裏口から入っていく。 「うす」 「おはよう」 「ではよろしくお願いします」  なんだか聞いたことのある声だな?ふと店の中を見ると、オーナーと話しているのは、パンの空きかごを持っている人。 「ああ、こちらこそ頼んだよ」 顔を上げた。 「祐一?」 「オー、久しぶり、何バイト?」 どきんと心臓が音を立てた。 うん、お前は? 研修が終わって配達員だそうだ。このエリア担当になったという。 日に焼けた腕が筋肉を盛り上げていた。  その日は、少しの挨拶だけで終わったが、これから、毎日じゃないが平日、この時間に会えると思ったら、なんとなくシフトに俺の名前を入れていた。 品だしをして、少しの間話をした。 俺の弁当の話しになって、又作ってやるといったら喜んでいた。  八月、夏休み中盤あたりから、祐一の顔から笑顔が消え始めていた。 「お疲れ!なあ飯」 缶コーヒーを渡した。 「悪い、配達まだあるんだ、これサンキューな」と俺の作った弁当を振った。 「おい、何か、抱え込んでねえか?つらかったら言えよ、たいした相談にも乗れないけど」 祐一は、その日俺に笑って手を振っていた。 あいつはあからさまに俺を避けるようになった。それだけなら良いが、夏のこの暑い時期、なんだかやつれていっているようで・・・。 でも弁当箱は洗って返してくれていた。 食べたんだろうな?  高校卒業、あいつに告白しようとしていたができなくて、それ以来ずっと会えないまま、恋心は封印した。でも又再会できて、喜んでいたのは俺だけだったみたいだな。 大学の長い夏休みが終わり九月、新学期、あいつとは会う機会がぐっと減ってしまった。店の人に話を聞くと、青い顔をして仕事をしているという、同級生でしょ?大丈夫なの?という。 俺は気になって、あいつの家へといってみた。高校二年のとき以来、久しぶりだな?  あれ?  確かこの辺だったはず。 市営住宅がなくなっていた。 白い壁、中では解体工事の真っ只中。 そこへ犬を散歩していた老人に話を聞いた。 老朽化で、取り壊しは決まっていて、三月で住人は全部出たという。 市営住宅はまだ他にもあるよな?調べようとして手が止まった。 そうだ、確か? 一番近いやつがいたはずだ、俺は高校のときのクラスメイトに、それを聞き、話を知らないかたずねることにした。 「ああここだ」 俺はインターホンを鳴らすと、母親らしい人が出てきた。 高校のとき同級生だった話をすると、大学に入り家をでてアパート暮らしだという、彼の住所を聞きだし、母親になにげに住宅の話を聞いた。 すると、小学校から一緒だったと香山家の話を始めた。 両親のことはあまり良いように思っていなくて、それでも子供たちはそれなりに一生懸命だったという。でも両親が悪すぎた、いい話は聞かない。 取り壊しも、最後まで居座った。 聞いた話だと、子供たちは親戚のところで、祐一だけは就職とかで、一家離散のような話を聞いた。 俺は頭を下げ、そいつのところにも律儀に顔を出した、たいした話をすることなく、祐一の話をさりげなく消そうとした。 「かわいそうだけどさ、あの親父、金借りに、子供の住所宛にして借りに言ってるなんてうわさになってさ、あいつも大変な思いしたと思うよ」 そうなんだ、ありがと。 俺はそんなことを聴いたことはない。ただ、祐一のあぶく銭は、全部食べる分に消え、母親の稼いだ金だけで何とかしていると聞いていた。父親と離婚したいと言う母親だが、なかなか前にすすまないのが現状だとこぼしていた。  でも、そんなことで済ませられないようなことがおきた。  その日、祐一は配達に来なかった。来た人に尋ねると、家で不幸があって休むということだった。 バイト終え帰り道、知らない番号から電話があった。 いたずらか? スルーしておこうとしたが、携帯番号ではないのに、検索すると中学校、隣町? 又なった。 「はい」 向こうで俺の名前を良い、聞いたことのある苗字を言った。 「はい、わかりました、すぐに向かいます」 それは久しぶりに聞いた祐一の弟の名前。学校で倒れて、病院へ担がれた。なぜか俺のところへ連絡が来た。 ただ事じゃない事態に、走った。 病院へ行くと、ショッキングなことを言われた。 「え?栄養失調ですか?」 今点滴をしているそうだ。 病院はいやだといっていたそうだ、でも倒れて運ばれた。 「ちょっと良いかな?」 医者は、衣服が汚れている話をした、警察に虐待届けを出すといわれたのをとめた。 とりあえず、時間外、保険証とかは明日で良いからといわれたが、目が覚めるのを待つしかないか? 祐一にラインはした。 金のかからないことを一生懸命していたからな。 でも目の前の子は、学ランの前ボタンをはずし、からだ半分出した状態でいるが、衣服は汚れ、においもしている。 目が覚めたのか、辺りをきょろきょろ見回す子。 「よ、久しぶり」 俺が言うと、彼は今にもなきそうな、顔をした。 「なくな、歩けるか?」 うんと言う、彼の荷物を持ち背中を押した。 「さて、俺んち行こう」 すると弟は首を振った。 「帰る場所、ないんじゃないのか?」 すると俺を見上げ、唇をかむその顔がゆがんでいく。 「とにかく行こうか?」 彼は立ち止まったまま動こうとしない。 「アーそうだった、まだ二人いたな」 「お、おぼえててくれてた」 「まあな」 「・・・あ、ありがと」そういうと、右腕で、目の辺りをごしごしふいた。 迎えにいくかというと、遅れて歩き出した。  そこは、この間行った、市営住宅の跡地を通り過ぎ、普通の民家が並ぶ場所。その一角に人が住んでいなそうな、ぼろぼろのつぶれかけた空き家のような家。 「ここは?」 「内緒」 こっちとひと通りのないほうから入っていく。 「兄ちゃん!」 「兄ちゃんおそ、誰?」 「よ、ひさしぶり」 「恭平だ!」といったのは女の子のようだ。 ぼさぼさの髪、何があったんだ? 「兄貴の友達だー」 覚えてたか?うんと言う子達、端にはリュックと紙袋、毛布が重なってあって、食べ物は・・・パンの空き袋がビニル袋に入っていた。ああ、そうか。 「ご両親は?」 「・・・わかりません、俺たち捨てられて」 とうとう、捨てたか。そう思ってしまった。 「祐一は?」 「親戚のところへ、俺たちそこからも追い出されて、ここへ着て」 そうか、わかった。 「荷物を持って、行くぞ、何か書くものはあるか?」 俺は、そこに、馬鹿ヤローと書いて、すぐに家にこいとでっかい字で書いたものを目に見えるところへ貼り付けた。 フフフ。 「どうした?」 え? 裸の祐一が俺の髪をかき上げた。 「気もそぞろ?なんだよ、俺以外の誰かのこと考えてた?」 違うと首を振った。 「いい男が目の前にいる」 「だろ、だろ?そんな彼氏をほっといて何考えてるんだ!」 パチュン!と音ともに、下から突き上げられ、星が飛んだ。 あー! 「声でかい」 「ご、ごめ、あ、あーだめ、そこ」 「ここがいいのか?」 「いい、だめ、いっちゃうよー」 「いっちゃえ、ん!おれもいきそ」 俺たちは、声を潜めながら、愛を育んだのだった。
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