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第五話
門扉をくぐって、玄関の前に立つ三人、こっちだよ。
「こっちは?」
小林と書かれた表札がある玄関、誰もが普通ならこっちへ行くだろうが、もうひとつ、裏口にあるようなサッシのドアに鍵を入れた。
そっちは俺の両親、俺んちはこっち、不思議そうな顔をしていた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
さすがだな。親はなくても子は育つ。
「先に風呂だな、洗濯機はそこにある、できるか?」
うん、うんという。
着替えカー、姉貴の何かあるかな?
隣の家へ、真っ暗で人気のない寒い家の中に明かりが付いた。俺の部屋は物置になっているからそこに行けば。
オー、物持ち良いな、もってけ。
団箱の横に、俺の名前と姉貴の名前の入った子供服と書かれたのを持ってきた。
さっぱりしてきた三人人、着替えさせ、できるだけ、洗濯するように話した。残暑でまだまだ暑い、すぐに乾くだろう。
さて、飯カー、そうだ、ラーメンと飯、どこかにあったよな?
インスタント麺、塩味があるな。隣から、インスタントのご飯。冷蔵庫は何もない、冷凍庫ーと、肉を拝借。
「さて、おい、手伝ってくれ」
インスタント麺三袋を、麺だけにして粉々にする。
「とう!」
「おりゃ!」という声がうしろから聞こえる、楽しそうだ。
ご飯を先に二つ。レンジでチン。その間ねぎを小口に切って、肉を切っていためる。
「できたよ」
「こなごな!」
それをフライパンに入れ、水を半分だけど、600もうちょといれりゃあ良いか,ふたをしてっと。もうひとつ、ご飯をチン。
二分、ご飯ができたら、オー、麺が水を吸って水分がなくなった。とのぞきながら言う子達。
ご飯をイン。後はチャーハンのように、いためて、付属のスープ、ゴマを入れ、ねぎを入れたら、真ん中に卵投入。
「すげー片手」
「三つ」
「もうちょっとな」
ふたをして蒸らせば完成。
「らー飯(はん)完成」
「うわー」
「いいにおい」
「水で良いか?」
うん。
ご飯を三つに分け、俺のは茶碗に半分だけ取った。
氷を入れた冷たい水。
「このまま?」
「そうフライパンからこそげとって食うんだ」
楽しそうにスプーンを持って喜んでる。
「では、いただきます!」
われながら、うまい。
下の二人。理佳、雄太、はうまいといって食っている、でも。
「アー、悪い、重いよな、おかゆにすればよかったか」
「いえ、いいえ、いただきます」
次男、裕次郎は気になるだろうな?
「まったく、早く連絡よこせよなぁ」スマホをのぞいてつぶやいたつもりが聞こえてしまった。
下の二人もスプーンを置いた。
「あったかいのもご馳走だからはやく食べろ」
次男を見る二人、兄は笑ってうなずくと二人はがっついて食べた。
裕次郎には、何も考えなくて良いから寝ろといった。
早々眠れるものではないだろうが、今は、ちゃんとしたところで眠れるから安心しろ。
すみませんと誤ってばかり。謝らなくて良いからと頭をなでた。
首をすくめ恥ずかしそうにした。
食事も取れ、薬も飲んだ、兄は二人を見ていたがそのうち寝息を立てた。俺もその辺のことをしながら、止まった洗濯機に次のものを入れまわし始めた。
三人は寝息を立てていた。
さて、姉ちゃんだな。
こっちに引き込もうと思う。
「は?家を貸す?良いけどサー」
家賃さえもらえば文句はないよなというと、まあ。
そこで、俺は姉ちゃんに頼んだ。
服やもろもろ、小さいときのをほしい。それは良い。
一応オヤジに姉ちゃんのほうから話してもらいたい。
「高いわよ」
「落ち着いたら必ず」
わかったわ、デモちゃんと話を聞かせて、連絡は?
まだ来てない、とにかく子供たちは眠らせた。
そう・・・ん?
なに?
あれ?今ニュースに。
俺はすぐネットニュースを開いた。
「姉ちゃん、父親だ」
俺はそれしか言えなかった。
父親は、事故でこの世を去った。
高速道路での車の衝突、ただ、巻き込まれたようではあるが・・・。
姉は、一応オヤジにメールだけは送ったわといってくれた、明日、みんなで話しましょうと、それに感謝した。
深夜、日付が変わり、やっと祐一から電話。
父親が亡くなったかもしれないという俺の声に、言葉をなくした祐一、早くこいという俺の声が聞こえていないのか、迎えに行こうかというとやっと声を出した。
「すまない」
「誤る前に行動だろ?」
「・・・ああ、そうだった、行くよ」
兄弟たちが俺のところにいると話すと驚いていたが、とにかく、話は来てからだ。
ラインでのやり取り、会社には連絡は?
親のことは話してある、一年前に離婚して、母親のほうにといってあるし父親には仕事のことは言ってないそうだ。
俺は裕次郎のことを書いた。
ごめん、もしものときは、頼れれば良いのになといっていたんだ、あいつ・・・ごめん。
誤るな。なあ、金持ってるか?
いくら?
何にもないんだ、味噌汁の具になるようなのを買ってきてくれないか?
何がいる?
豆腐・・・だけでいいか?
ねぎは?
ある、ワカメもあるしな。
オッケー。
さて、米を研いでおけば、なんとかなるっしょ。
トントントンとノックがした。
インターホンは使わない、覚えていてくれた。
「よ」
「すまない」
入れと、中へ入れ、豆腐を買ってきたと中を見ると二丁の特大豆腐、ドンだけ食うんだ、まあいいか。
冷蔵庫に入れた。
「腹減ってるだろ」
「え?いいよ」
遠慮するな。
子供たちと同じものを出した。
「懐かしいな、いただきます」
高校のとき、こうやって食べたことが何度かあったのを懐かしんだ。
食べながらでいいかというので話を聞いた。
借金だらけの父親、負債額はどうにもならず、母親と離婚したのが去年の十二月。子供たちは、父親の借金から逃れるために、自己破産をした。そこまでは、祐一もわかっている範囲だった。就職先へ迷惑はかけられないという母親の決断だったそうだ。
母親は住む場所も新しいところで心機一転と思っていたが、父親は居場所を突き止め、居座った。
母親は逃げるように、子供たちを親戚のところへ預け姿を消した。これが七月中旬だったそうだ。
親戚のところから連絡が入りそれを知ることになり、無理だというので押し付けられた祐一は、会社の寮に入ろうとしたが、いっぱいで無理で、新しい場所へ戻ろうとしたが、母親が解約をしていて、父親もどこかへ行ってしまった。
荷物をとりあえず預け、住む場所を捜し歩き、あの空き家へ入り込んだという。
「どうにかしなきゃと思っていたんだけど、どうにもならなくて、すまん」
祐一が下を向いたとき、ぽたぽたと涙が落ちた。
食ったら、風呂入って寝ろ、後は明日だ、警察も来るかもしれないからな。
うん、うんとうなずいて、祐一は、兄弟と一緒に丸くなったのだった。
次の日、休みにしてあるという祐一とともに姉のところへ行き、話しをした。
そして、俺の家を借りるという契約書まで作った姉。もう、凝り性だよなー。
祐一たちは俺の家に住むことになった。
「ねえ、父さん帰ってきた?」
「いや?俺がいるときは知らないけど」
「そう」
母さんに、挨拶だけするように、それでクリアできるという。
「いいのか?」
「いいのよ、あそこは私の家なんだもの、もんくはいわせないわよ」
ありがとです。
でもこれからお金はかかる、まずは、裕次郎だけでも保険証を動かすために、兄貴のに入れろという。下二人は、後で、今は金を払わなきゃいけないそっちをすぐにして来いと、役所へ行ってもろもろのことをして、病院へ行ってきた。
二世帯住宅は親父の親と住むはずだった。
でも完成まじか、二人はあっけなく死んでしまい、空きや同然。両親も帰ってこないし、そのまま。ただ、頭のいい姉は、その部屋を学生たちに貸してお金を入れていた。
俺が高校に入るときまでだったんだけどな。
ローンの残る家を姉ちゃんは受け継ぎ、ちゃっかり自分のものにした。
自分への投資だそうだ。
父親からは家賃という形で、毎月金をもらっているそうだ。老後も見ないといけないし、貯蓄もしているという姉は、大学卒業後、弁護士事務所でパラリーガールをしている。給料はそうとう良いが、家に帰る暇もなく、寝るだけのアパートを近くに借りている。
やはり警察が来た。
学校から探し当てたようで、俺は祐一と二人、オヤジさんの身元確認へといった。
事故は高速道路での玉突き事故、運転をしていた仕事相手と父親は悪くない、それにあからさまにほっとする祐一。
祐一は、どうにもできないので、そっちで処理してくださいと頼んだ。
苦い顔をしている警官だったが、わかったと、遺体を置いて帰ってきた。
祐一の手には、死亡診断書と相手方の弁護士の名刺、会社の社長の名刺が握られていた。
俺は声を掛けることもできず、黙ったまま帰路に着いたのだった。
そして、同居が始まった。
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