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オフィスビルが立ち並ぶ通りにあるカフェで私と修は出逢った。
平日の昼下がり、1階の画廊でぼんやり作品を眺めた後、2階のカフェに立ち寄った。
英国風の落ち着いた雰囲気で、座席の間隔が広く取ってある。
案内された窓側の席に座ると薄い緑色の葉をつけた街路樹の風に吹かれるさまが何とも心地がよい。
お茶だけにしようと思っていたけれどアフタヌーンティーセットを注文することにした。
「アフタヌーンティーセットをロイヤルミルクティーでお願いします。後、生クリームを少し温めて頂くことはできますか?」
私はかなりの甘党で甘いお菓子に甘くしたロイヤルミルクティー、更にそこに少し温めた生クリームを加えるのが好きだ。
これを注文すると大抵は驚かれるが、注文を受けたウェイターは『可能でございます』と静かに微笑んだ。
窓の外の街路樹を眺めながらアフタヌーンティーセットが運ばれてくるのを待っていると私の背中側の席に案内された人がいた。
聞き耳を立てた訳ではないけれど注文する声が何となく耳に入る。
「アフタヌーンティーセットをロイヤルミルクティーで。それと少し温めた生クリームを追加で」
「かしこまりました」
声からすると男性、しかも私と全く同じ注文をするなんて、どんな人なのか興味が湧いた。
「お待たせ致しました」
そんなことを思っているとアフタヌーンティーセットが運ばれてきた。
「こちら、アフタヌーンティーセットとロイヤルミルクティー、少し温めました生クリームでございます」
「ありがとう」
さぁ、頂きましょうと生クリームを手にした所で人影に気付いた。
ウェイターかと思い顔を上げるとスーツ姿の男性が目を輝かせて立っていた。
無言で男性を見上げる私に嬉しそうに話しかける。
「俺と同じ注文をする人に初めて会いました」
「・・・・えっ?」
「ああ、失礼しました。俺、相当の甘党なんですよ。スイーツに甘いロイヤルミルクティ―でプラスの生クリーム。なかなか、こんな注文する人に会わないから親近感湧いちゃって・・・・って、ごめん。突然、話しかけて」
「いえ・・・・」
持ち上げたミルクポットが重たく感じる。
「よかったら話しませんか?独りですよね?俺も独りだから・・・・って、あっ、ナンパじゃないですよって、ナンパなのか?」
自分の行動に突然照れたらしい。
私は「どうぞ」と同席を許した。
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