生クリーム ラプソディー

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修は私の不安を払拭するには一緒に住んでしまえばいいと手頃なマンションを見つけてきた。 修と付き合い始めて2か月後、私たちは一緒に暮らし始めた。 これだけネットが普及しても現地で直接目にして、触れてみないと判らないことがある。 私が付き合う前に伝えた事が一緒に暮らし始めて理解できたらしい。 それでも修は一緒にいる時はいつも楽しそうにしてくれていた。 食べ歩きする時間が取れなくなるとアフタヌーンティートレイを買ってきて、私の好きなウェッジウッドのティーセットを並べる。 カフェにいる様に食卓を囲み、夢を語り合う。 修は空間デザイナーとしての独立を考えていた。 独立すれば私との時間がもっと取れる様になる。 海外出張も一緒に行けるし、私が勤める会社とのコラボ企画も提案できるかもしれない。 修にとっての仕事は私といるための道具に変化していった。 修の気持ちは嬉しいが、私は修の想いが少しづつ負担に感じ始めていた。 どちらかと言うとスレンダーな体形だった私は徐々に丸みを帯びだした。 食卓を囲むアフタヌーンティーセットと修の想いに応えたいストレスからくるものだった。 「茜は細すぎだから少しくらい、肉がついてもいいんじゃないの?」 修は私の腰回りに触れ『問題なし』と笑って言った。 そのまま半年ほど過ぎ、クリーニングから返ってきたスーツに袖を通して愕然とした。 「スーツのボタンがとまらない」 私の体重は10kg程増えていた。 修は相変わらず細身のまま、体重も体形も出逢ったころのままだった。 独り暮らしの頃、私は糖質コントロールをしていたが、修と暮らし始めてからは彼に合わせて出されるがまま食べていた。 流石にまずいと思ったのか、修はアフタヌーンティーセットを禁止しようと言い出した。 「茜が5Kg減量するまでアフタヌーンティーセット禁止ね。俺も付き合うから。で、残り5kgの減量はその時の体形を見てから考える。元々、細すぎだから5kg減位で丁度いいんじゃないの?」 修の提案に鎖で縛られた様な感覚に襲われた。 私にとってのアフタヌーンティーセットは癒しの一つだ。 それを禁止するのは最後の手段であって、もっと別の方法で減量できるはずだ。 私の身体なのに自由にコントロールできない 状況が窮屈に感じた。 それでも修がせっかく提案してくれた事だから、しかも一緒に禁止すると言ってくれたから私は窮屈さを感じながらもアフタヌーンティ―を禁止した。
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