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「アフタヌーンティーセットとロイヤルミルクティー、少し温めました生クリームになります」
「ありがとう」
あれから1年。
修の事は一日たりとも忘れた事はないけれど、連絡も一切取っていない。
元気でいてくれることだけを祈る1年だった。
私は今、修と出逢った日の同じ時間に同じカフェにいる。
海外での暮らしにも慣れ一時帰国していた。
何ともまた面白い巡りあわせだと思う。
アフタヌーンティーセットはあれからずっと禁止していた。
体重は元に戻り、修と出逢った頃の体形を保っている。
だから、今日はアフタヌーンティーセットの解禁日。
ロイヤルミルクティーの香りを大きく吸い込む。
心地のよい甘い香りに改めて癒された。
ミルクポットを手にした瞬間、人影に気付き顔を上げた。
「えっ!」
思わず声が零れた私に少し緊張した面持ちで話しかける。
「俺と同じ注文をする人に会ったのは二度目です」
「・・・・」
「俺、相当の甘党なんですよ。スイーツに甘いロイヤルミルクティ―でプラスの生クリーム。こんな注文する人、俺の他に一人しかいないんです」
声が震えているのが判る。
私が手にしたミルクポットをそっと離すとテーブルに置いた。
「茜、探した。茜の会社に何度も行ったんだ。ストーカーだと思われて通報までされかけた。でも、何度も何度も茜のこと、元気なのかだけでも教えて欲しいって頼み込んだ。一時帰国するってことだけ教えてくれて。きっと、ここに・・・・うっ・・・・このカフェにくるって思った。俺、ごめんっ!茜の言う通り、茜の一番になりたかった。俺だって仕事好きだし、大切に思ってる。だけど、思ってるけど茜といる手段だったんだ。けど、茜は仕事が一番で・・・・だから同じことを同じように共有できる縛りが欲しかった。お互いに好きな物を禁止すればその時だけはお互いが一番になれるって思った。そんなの必要なかったのに。ごめんっ!」
修は涙を堪えながら一気に話した。
「アフタヌーンティーセット、俺も今日が解禁日なんだ。茜がきっとここで解禁するって思ってたから一緒にどうかな?ご一緒してもいいですか?」
私の視界は歪んで温かいものが頬を伝う。
修はそっと手を伸ばして私の涙を拭った。
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