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彼女ははっきり口には出さないけど、彼女がふとした時に俺に見せる表情も、“恋する女性”になってきた。
“もういい頃だろう?”
俺は今回のグループでのプロ野球観戦が終わったら、次に彼女を誘う時は、二人きりで会うことにした。
“ようやくデート解禁だな?”
そう考えると、俺の頬は自然と弛んでしまっていた。
多佳子とタカシとエッちゃんとの4人でのプロ野球観戦を終え、エッちゃんはスタジアムを出てすぐ帰ったので、俺と多佳子とタカシは3人で近くのカフェに行くことにした。
本当はタカシにも空気を読んで帰ってもらいたかったけど、こればっかりは仕方ない。
「今日の試合、面白かったね」
「ねー」
動くのは次の“デート”と決めたはずなのに、意識してしまっているので、うっかりすると、タカシを無視して多佳子ばかりに話しかけてしまっている。
“ダメダメ。今日はタカシがいるんだし、セーブしなきゃ”
俺は多佳子の素朴な笑顔を見つめながら、緩む頬を必死で抑えていた。
「あ、そろそろ多佳子の電車の時間だし、今日はもう帰ろうか?」
多佳子を前にして気持ちが昂ってしまった俺は、ワンチャン、そう言えばタカシがここで先に帰らないかな?と、多佳子の乗る電車には少し早いけど、そう水を向けてみる。
運良くタカシがここで帰れば、次回とは言わず、この後多佳子と二人で“デート”してもいい。
でもタカシは帰ろうとする素ぶりを見せない。
それどころか、何故か多佳子の方がソワソワし始めた。
何か言いたそうにモジモジとして俯いてしまった。
「多佳子、どうした?」
「あ、あの、ユウタ君、ちょっといい?」
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