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急に畏った多佳子が背筋を伸ばして俺の名を呼んだ。
そして、何故かタカシも一緒に背筋を伸ばす。
そう言えば、今気づいたけど、何故タカシは初めから多佳子の隣に座ってたんだろう。
「な、なに?どうしたの?」
「あ、うん。えっとね。
私、タカシ君と結婚することになったんだ。
少し前にタカシ君からプロポーズ受けてたんだけど、昨日、両方の親にも挨拶済ませてね。だから、今日から情報解禁!
私のことをずっと気にかけてくれていたユウタ君に真っ先に知らせたくて。今日のプロ野球の試合に私たちを誘ってくれて、ちょうど良かった!
ありがとうね」
「お、おう、お、おめでとう…。知らなかったよ」
「えっ?私たちが付き合ってるの知ってて、今日誘ってくれたんだと思ってた」
「えっ、ああ、いや、知ってたよ!知ってたさ!知ってたとも!!」
顔で笑って心で泣いて。
泣きそうになるのを堪えながら飲み干したコーヒーは何故かしょっぱかった。
トラさんの気持ちが少し分かった気がした。
終わり。
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