第二章:幼なじみとの微妙な距離

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「あのさ、俺、真中と同じサークルに入るかも」 「どんなサークル?」 「みんなで野球観戦をするサークル。だから野球好きの男女が集まるんじゃないかな」 「それってコンパサークルなんじゃないの?」  意外にも上松はすぐにわかったようだ。 「まぁそうとも言うかもしれないけど、せっかく大学生になったんだからそういうのもいいんじゃないかって」 「今の真中くんからは想像できるけど、ヒガシくんはそういうの……向いてないんじゃないかな」 「そんなのわからないだろ」 「それよりさ、僕たちと一緒にまた文芸部やらない? 同好会作れるらしいから今、調べてて」 「もういいだろ!」  大雅は立ち止まって声を荒げた。 「ヒガシ、くん?」 「あのさ、俺たち学部も違うし、それぞれ違う人間関係ができてくのだって、あり得る話だろ」 「……」 「文芸部を否定するわけじゃないけど、俺が他のことに興味持ったらいけないのかよ」 「ごめん」 「それに俺だって彼女とか、できるかもしれないし」 「……」  目の前の上松は黙って俯く。その表情は儚げで悲しげで、まるで傷ついているかのような表情だ。 「そーゆーことだってあるってこと。おまえだって彼女、できるかもしれないだろ」 「……できないよ」 「そんなのわかんねぇだろ。もっとおまえもさ、交友関係広げてみれば? 俺だけじゃなくさ」 「……」  上松は返事をしなかった。  結局、二人の会話はそれっきりで、別れ際に「じゃあな」と言葉を交わしただけだった。別に傷つけるつもりなんてなかった。そもそも正論を言っただけだ。  けれど上松の悲しそうな顔が忘れられない。  ――好きなやつにフラレたみたいな顔しやがって。  別に上松から好きだと言われたわけじゃない。小説だって身近な人間をモデルにしてるだけで、上松自身が大雅のことが間違いなく好きだとは決まったわけじゃない。  それにもし上松が、自分と男性同士の恋愛をのぞんでいるのなら、答えはノーだ。自分たちはただの幼なじみで、これからもずっと友達のはずだ。今更、そんな目で見れるはずがないんだから。
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