第二章:幼なじみとの微妙な距離

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***  それから二週間ほど経過した。真中とはそれからも一緒に行動している。そのほかにも、真中の高校の時の友達も含め、四人くらいでつるむことが多くなった。彼らの話題の中心は、ファッション雑誌やブランドなどといった華やかな世界の話で、知り合いの先輩のこういうところがかっこいいとか、あの雑誌に載っていたモデルは同じ大学にいるとか、そんな内容がほとんどで、大雅は常に聞き役だった。真中も含め、彼らは今まで大雅の周囲にいなかったタイプの人間だ。  最初は、自分が今まで知らなかった内容ということもあり、興味を持って聞いていたのだが、そろそろ聞いているだけが苦痛になってきた。どれだけ、あの店の美容院がいいとと聞いても、そもそもファッションに興味がないので、自分で行こうとも思わないし、外見なんて汚れてなければいいと思っている大雅からすれば、お金がもったいないとさえ思ってしまう。同じお金を使うなら、読みたい本を買ったほうがいいし、話すなら自分の買った本について語りたいし、聞くなら本の話のほうがきっと自分が楽しい。そうわかっていても、真中のそばにいるのは、せっかく大学生になって今までの自分を変えたい、という意地もあるのかもしれない。あのとき『それぞれ違う人間関係ができていくのだってあり得る話だろ』と上松に行ってしまった手前、引き下がれない。気づいていても、まだ足掻きたい、変なプライドが邪魔している。   その肝心の上松からは、あれ以来連絡がない。今までほぼ毎日欠かさず、おはようとおやすみの連絡をしてきたのにまったく来なくなった。やはり別れ際が気まずかったせいだろうか。おかげで、つい先日は、寝坊しそうになった。自分よりも早く起きる上松のメッセージをあてにしていたんだな、と我ながら情けない。別にそれがなかったからといって上松が悪いわけじゃないし、責めるつもりもないのだけれど。 「……東山!」  名前を呼ばれた気がして、顔をあげると、そこには真中と他の友達が大雅の顔をのぞきこんでいた。 「あ、ごめん。ボーッとしてた、何?」 「いや、ラーメンちっとも食べないから」 「え、ああ」  目の前にはさっき自分が買った味噌バターラーメンが、ひとくちも食べられていないまま、鎮座している。昼休みに食堂へ来たのだが、ぼんやりしていて食べるタイミングを見失っていた。 「具合悪いの?」 「いや、そんなことないよ。で、なんの話だった?」  大雅は慌てて割りばしをわって、ラーメンを啜り始める。慌てて食べたせいか、ちょっとむせた。 「あーあ、落ち着いて食べろって」 「いよいよ今日だねって話をしてたんだよ」 「今日って何が?」  チャーシューを頬張りながら聞く。特に今日は何も予定はなかったはずだが。
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