第二章:幼なじみとの微妙な距離

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「上松は一週間くらい前から体調不良で休んでいる」 「え? マジか」 「ラインにも返事がなくて、ヒガシに聞こうかと思ってたんだよ」 「そうだったのか」  もしかしたら連絡がなかったのは体調が悪かったから、なのか。 「東山は本当に体調不良だと思うか?」  南野が神妙な面持ちで大雅に尋ねる。 「なんだよ、脅かすなよ」 「休む少し前、上松は元気がなかった。無理して気丈にふるまっているような感じだった。 なんか心当たりはないか?」 「いや……心当たりっていうか、大学始まったばかりだし、疲れたりとかそういうんじゃないのか?」 「えー、でもうえまっちゃん、毎日、授業も楽しそうだったんだけどなぁ」  普段から一緒にいる北川がそういうのなら、大学生活そのものに原因はないのだろう。となると、やはり原因は―― 「東山、様子を見てきてくれないか」 「え、俺が?」 「頼む。俺たちがおまえに頼んだってことにしていいから」  その南野のまわりくどい言い方は精一杯の気遣いなんだとわかった。おそらく南野はなんとなく上松の体調不良の原因は大雅にあると思っているのだろう。だからわざと、様子を見に行く理由をつけてくれているのだ。 「じゃ、俺もいく!」 「晴陽、ここは東山に任せよう」 「ええー、なんでー」 「本当に病気だったとしたら、おまえが行ったら悪化させるかもしれないだろ」 「どういう意味だよ!」  北川は納得していないようだが、南野の言いたいことはわかった。二人で話し合え、という意味なのだろう。 「わかった。行ってくる」 「頼んだ」 「あ、そうだ、これ渡してほしい!」  北川は隣に置いていたトートバッグから雑誌らしき紙袋を取り出した。 「なんだこれ」 「さっき、学校の本屋で買ったんだ! 今月号のノベルジーン」 「そういえばあいつ毎号、これ買ってたな」 「そう。まだ買ってないと思うからお見舞い!」 「わかった、渡しとく」  大雅は北川から紙袋を受け取り、それを持っていたリュックに入れた。 「じゃ、行ってくるわ」 「え、ヒガシ、午後からの授業は?」 「心配だからこれから行ってくる」 「サボリじゃん!」 「しょーがないだろ、あいつが悪い」  そう言い残し、大雅は食堂を出て、足早に大学を後にした。
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