第一章:優しい男との再会

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「まさか同じ大学でしかも同じ経済学部だなんて、すごい偶然だな。野球は続けてるのか」  野球部の仲間とはあれから連絡をとっていないが、真中は野球でスポーツ推薦を受けて進学校へ行ったと風の噂で聞いていた。 「ううん、高校一年の夏で肩壊してそれっきり」 「マジか、悪かった」  知らなかったとはいえ、あまりにも考えなしに聞いてしまったことを反省した。 「気にしてないよ。野球は中学が一番楽しかったなぁ」 「そっか……。いや、それにしても、お前垢抜けたなぁ。真面目な坊主のキャプテンというイメージだったのに、なんだよ。髪を伸ばしたら爽やかイケメンだったんだな」 「おかげさまで高校では帰宅部で充実した学生生活を送ってたよ」 「くそ、滅びろ」  平均より低めの168センチで黒髪短髪に顔はフツメンというどこにでもいそうな自分からの精一杯の妬みだ。 「ね、よかったらオリエンテーション一緒に参加しない?」 「ああ、いいぜ」  大雅は即答した。上松を含め、高校で仲が良かった文芸部の面々はみんな文学部にしたこともあり、自分と同じ経済学部に進学した知り合いはほぼいなかった。なのでこうして知っている人間を見つけられたのは心強い。
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